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地産地消のバイオマス発電に商機見いだす
(15/08/19)

 「地熱や小水力、それにバイオマスといった再生可能エネルギーの事業化には、どうしても、時間がかかる。それが、ここへきて、ようやく動き出した」。バイオマス発電を手がけるZEエナジー(東京)の松下康平社長は、再生可能エネルギー最前線で感じる“手応え”をそう説明する。東日本大震災から4年5カ月余り。震災後に取り組みが始まった新エネルギー関連プロジェクトの多くが、いよいよ本格化する時期にさしかかったようだ。

 ZEエナジーは平成20年設立、社歴7年の環境・エネルギーベンチャー。バイオマス発電に関わるプラント、燃料、炭化・ガス化装置の製造販売や、環境コンサルティング、リサイクルシステムの調査・研究・分析などを業務としている。社歴は10年足らずだが、松下社長自身は、炭化技術をはじめとするバイオマス関連の研究開発に20数年間、携わってきた。そうした経験や蓄積が、大震災・原発事故がもたらしたエネルギー新時代に物を言うことになる。

 「出力2000kw以下のコンパクト発電が当社の守備範囲。大規模発電のすきまを狙っていく」(松下社長)。すきま狙いを実行するため、通常の水蒸気でタービンを回す方式ではなく、木材の熱分解ガスでエンジンを回すというユニークな仕組みを編み出した。排熱利用のほか、排ガスの二酸化炭素も活用する“トリジェネレーション”も実用化した。これらによって、発電効率や熱効率に優れた地産地消型のバイオマス発電事業を可能にした。同社が2000kw以下に狙いを定めた背景には、2000kw以下の木質バイオマス発電による電気の買い取り価格は、高めの設定で優遇されるという事情もある。

 バイオマス発電所はこの1、2年で、全国数十カ所で新たに稼働すると見られている。そのうち、1000kw木質バイオマス発電所(山形県)、600kwメタン・バイオマス発電所+トマトハウス(富山県)をはじめ、いくつもの案件にZEエナジーが関わっている。同社では、これら国内プロジェクトのほか、インドネシア・バリ島でのごみ発電事業や、スリランカでの製造拠点づくりなど、海外プロジェクトも同時並行で進めている。

 間伐材を燃料とする同社のバイオマス発電は、間伐を促し、山や森林を守ることにつながる。また、里山などでの事業化が容易なため、過疎地の雇用を創出し地方創生に役立つ。国のエネルギー政策に目を向けると、短・中期では、電力小売り自由化や発送電分離が進められ「今まで色がなかった電気に、これからは色が付く」(松下社長)という変化が見込まれる。長期的には、2030年度エネルギーミックスの青写真で再生可能エネルギー、とりわけバイオマスの重視が打ち出されるなどで、「バイオマス発電は今より100倍伸びる」(同)方向性にある。時代の風に乗る同社が、どこまで高く飛翔するか・・・。

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