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学習メカニズムを究明し、技能伝承ツールを世に問う
(15/07/29)

 技能伝承、教育・訓練、マニュアルによる伝達…。これらの取り組みが所期の成果を収めるには、「人」は情報をどう受けとめるのか、技能や知識・ノウハウをどのように身に付けていくのかといった学習メカニズムについての深い考察が欠かせない。創造デザイン(東京都町田市、李寛寧社長)は、「学習とは」を綿密に調査研究し、その上で技能伝承・映像マニュアル作成ツールを商品化したソフト会社。見える化や反復学習をキーワードとする効果的、効率的な“伝え方&教え方”を編み出して、ユーザーの裾野を着実に広げている。

 同社は平成11(1999)年、それまで試作品制作会社で開発業務に携わっていた李氏が独立、創業した。当初はCAD/CAMシステムなどを手掛けたが、2007年問題(団塊世代の大量退職に伴う企業ノウハウ喪失)への関心の高まりなどを踏まえ、次第に技能伝承に軸足を移すようになる。「伝えにくいカン・コツを、どう伝えるか。そこが技能伝承のポイントで、情報伝達の手法、メカニズムや、“利き脳”があるといわれる人の脳にどう働きかけたらいいかなどを調べて回った」(李社長)。

 一連の調査活動を通して、重要な部分を手書き文字で示すことがミソ、動画と文章の両方を同時に見ながら読みながら学習できる環境が理想、何度も繰り返し学べる反復学習の環境づくりが理解度の向上に直結する−などが分かったという。同社では、これら知見に基づき、「手書き」「動画+文章」「反復学習」の3要素を備えたソフト製品を開発し、技能伝承・映像マニュアル作成ツールとして世に問うた。「ほこりをかぶっている紙媒体のマニュアルが有用な電子マニュアルに変身する」(同)。こうしたセールストークが徐々に浸透して、現在、ユーザー数は大手企業を中心に数十社に達している。

 同社では、マニュアル作成ツールの発展形として、遠隔地現場リアルタイム技術支援&統合管理システムも開発した。これは、テレビ会議システムの現場版となるもので、製造、建築土木、医療などの各現場に対して、手書きマーキング情報を共有しながらの技術支援を遠隔地から施せるようにした。李社長は「テレビ会議では、現場が見えないために、うまく伝わらず、出張をするしかないような案件にも対応できる」と“出張いらず”を訴求し、新規ユーザーの獲得に弾みをつけている。

 ハヤリのIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)エキスパートシステム(専門家システム)とも一脈相通じて、先進性、将来性に富む同社製品の“悩みの種”は、製品自体の分かりづらさにあるという。そこで、「毎月のように各地の展示会に出展し、多くの人にデモを見せ、良さを分かってもらうように心がけている」(同)。現場・現物・現実の3現ならぬ、技能・遠隔地・展示会の三つの現場に照準を合わせた3現主義が、同社躍進の原動力となるようだ。

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