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売り主のモヤモヤ体験から中古住宅売買インフラを立ち上げ
(15/06/24)

 ニュービジネスの成功例には、不便、不満を実感し「あったらいいな」を立ち上げたという案件が少なくない。ネット上の価格比較サイトや、髪を切るだけの1000円理髪店が代表事例として挙げられよう。houselog(ハウスログ、東京、槇太郎社長)が手掛ける「中古住宅専門の個人間売買プラットフォーム事業」も、そんな「あったらいいな」から具体化した取り組み。「自宅マンションを売却した際、モヤモヤしたものが残り、売り主のための仕組みがないことを痛感した」(槇社長)のが同事業の原点となる。

 ハウスログの中古住宅・個人間売買プラットフォームは(1)住まいの売却を検討している売り主が、住まいに関する情報をウェブに登録する(2)中古住宅を物色している買い主が、登録情報の中で興味を持った物件の売り主と、コメントやメッセージで直接、やり取りをして成約につなげる−といった仕組み。登録情報として、広さ、間取り、築年数などの「ハードスペック」のほか、こだわりのリフォーム箇所、窓から見える景色をはじめ、さまざまな「ソフトスペック」を、写真を中心にふんだんに載せていくのが大きな特徴となる。

 「子どもが小さかったので、3LDKのマンションを1LDKにリフォームした。そのマンションを入居5年後に売却した際、依頼した大手不動産会社には、広い1LDKでは高く売れないと言われたが、突っぱねて我を通したところ、結果として、結構いい値で売れた。一連の経験を通して、日本では中古住宅売買のインフラ、特に売り主の立場に立ったインフラが全く未整備であることがよく分かった」(同)。自身の体験を踏まえ、昨年8月にハウスログを設立し、運用システムの開発を経て、今春、中古住宅売買のプラットフォーム事業を立ち上げたところだ。

 同事業では当面、売買成約時のマージンを主な収入源としていく。「不動産業者とけんかをする気はない」(同)ということで、既存業者と連携し、売買契約は業者に任せて、業者の手数料の一部を受け取る格好にした。当初は東京のマンション物件に絞り込んで事業を展開するが「ゆくゆくは全国6000万戸を当社のプラットフォームに載せたい」(同)と夢は大きい。

 わが国住宅事情の趨勢は、少子高齢化から供給過剰と空き家の増加が続くのは必至。槇社長は、そうした状況が進めば進むほど、中古住宅売買のニーズが高まり、ひいては、自社のプラットフォーム事業に追い風が吹くと見る。槇社長は、ネット通販マーケティングや人材派遣の会社経営にも携わる実業家。時代の風を察知する経営者の嗅覚・触覚と、マンション売却時の一個人の思いが重なって動き出した新事業が首尾よく成長発展するならば、「日本の住まいぶり」も大きく変わっていきそうだ。

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