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新潟発・世界初の成果引っ提げ、バイオベンチャーが始動
(15/04/30)

 地方創生、バイオテクノロジーと6次産業化、産学連携、グローバル展開と、今どきキーワードを“満載”しているベンチャー企業が新潟市にある。UniBio(ユニバイオ、結城洋司社長)がそれ。「より安全で、早く、安いバイオ関連製品の提供」を事業目標に掲げて、有用タンパク質の製造や植物バイオの研究開発を推進中で、新潟発・世界初の成果も生み出している。「ここ新潟にイノベーションを起こす」(結城社長)と、地域を巻き込んだ事業が、いよいよ本格始動する。

 同社は結城社長、佐藤征也取締役技術本部長、佐藤弘子取締役総務部長のトリオが創業メンバーとなり、平成23年3月に発足した。経産省の産学連携事業の技術移転スペシャリストとして活動していた3人は、平成21年、米国で開かれた世界最大のバイオ会議・展示会「BIO2009」で、植物による有用たんぱく質生産技術に出会う。同技術の革新性に惚れ込み、日本に導入しバイオビジネスを立ち上げることで意気投合。3人とも新潟県の出身であったことから、新潟で起業して今日に至る。

 一過性遺伝子発現法による植物利用型タンパク質の生産−これが同社のメーンテーマとなる。一過性遺伝子発現法とは、植物の遺伝子を組み替えずに、必要なタンパク質だけを合成する技術で、それ自体は公知のものだが「目的のたんぱく質が確実につくられる環境にするには、補助的な遺伝子情報を作成することが欠かせず、その部分が当社独自の開発要素となる。目的とするタンパク質を植物体から抽出、精製する技術にもオリジナリティーがある」(佐藤征也技術本部長)。これらの分野で多くの国際特許を出願済みという。

 同社では、独自技術を駆使して平成24年に世界で初めて、植物でEGF(上皮細胞増殖因子=有用タンパク質の一つで、肌の若さを保つ作用があると実証されている)の発現に成功。その延長線上の取り組みとして、葉タバコで作るEGFを原料にした化粧品の製品化に今夏、本格的に乗り出す。従来のEGFが大腸菌由来のため、様々な問題点が指摘されているのに対し、植物由来がもたらす「安心感」が強み。新潟県内の企業や大学が結集している健康ビジネス協議会とも連携し、地域に根ざした新事業創造を目指していく。

 地域密着の一方で、米国やドイツのバイオ企業と共同開発を進めるなど“グローカル”なビジネスを展開中。また、新潟大学、東京大学、東京農工大をはじめとする大学・研究機関との産学連携にも幅広く取り組み、最新の研究成果を享受できるようにしている。「EGFは再生医療分野の研究試薬としての活用も見込める。高価な海外製に依存しているのが研究試薬の実情で、試薬の国産化につなげて、日本の再生医療の発展にも貢献したい」(佐藤総務部長)とする同社には、時代の波頭に立つ「新しさ」が強く感じられる。

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