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実体験と読書から知恵を得て、ECサイトで勝ち残る
(15/04/01)

 インターネット勃興期の1990年代初めから今日まで、電子商取引(EC)に関わる様々な取り組みが繰り広げられており、斬新なECサイトの登場が注目されたりもしている。半面、20年余りの“戦国時代”を経て、EC業界の勢力地図はほぼ固まったようにも思える。確固たる地位を築いたECサイトの一つに、業務用食材卸売市場「Mマート」がある。運営主体はサイト名と同じMマート(東京、村橋孝嶺社長)で、「パソコンもネットもど素人で始めた」(村橋社長)という事業が、戦国の世を勝ち上がり、一国一城の主に収まった。

 同社は平成12年(2000年)に発足し、食材のBtoB(事業者間)サイト「Mマート」を開業する。創業者の村橋社長は長年、飲食業に携わっており、食材の仕入れで苦労が尽きなかった。当時、急速に普及したインターネットを使えないかと、ある会に入会したところ、とても商売に使える代物ではない。よし、それなら自分でやってしまおう、と立ち上げたのがMマート。還暦を過ぎた60代前半での起業となる。

 売り手と買い手のマッチングの場となるECサイトでは、会費、手数料などを誰から、どれだけもらうかといったビジネスモデルの如何が事業の成否を左右する。Mマートは立ち上げの趣旨からして「買い手(飲食業)が、いいものを安く仕入れられる“買い手のためのサイト”に徹底した」(村橋社長)。買い手のニーズを熟知していることから、生鮮品、加工品、酒類、米をはじめとする食材はもとより、食器、厨房機器、消耗品、ユニフォームなど飲食業に欠かせない種々のアイテムも品ぞろえし、ワンストップで事足りる利便性を追求した。

 作戦はズバリ当たって、Mマートは躍進に次ぐ躍進を遂げて、今日に至る。「今ではMマートともう一つしか残っていない」(同)と、乱世を制して、食材BツーBサイトの領地に巨城を築き上げた格好だ。「インターネットがもたらす情報革命はイコール販売革命で、機会損失の解消や、買い手の都合に合わせた時空同時性の実現が、その本質」(同)と捉え、販売革命を率先垂範したことが今日のMマートを形づくった。

 村橋社長は無類の読書家で、講演依頼も多い。ある講演会では「世界には三つの経済社会体制が混在する」として、供給するだけ需要があるプレ資本主義、需要と供給が拮抗する資本主義、投資が起こりにくく儲かりづらくて、資本より知恵の価値が高いポスト資本主義を解説し、聴講者をうならせた。村橋社長の、豊富な実体験と読書量に裏打ちされた時代の変化を見通す眼力が、Mマートをさらなる高みに導きそうだ。

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