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町工場発、『楽しいものづくり』を有言実行
(15/03/25)

 カンフースター、ブルース・リーが得意とした武器がヌンチャク。スマートフォンを、そのヌンチャクのように振り回せたら面白いかも。そんなアイデアを実際に形にしたのがニットー(横浜市、藤澤秀行社長)だ。開発、製品化したのは“無駄にかっこいい操作性”が売り物のiPhone用ケース「トリックカバー」で、そこには新しいモノづくりのエッセンスがぎっしり詰まっている。

 トリックカバーは、iPhoneを覆うケースと自由に回転・移動するカバーにより、iPhoneを自在に振り回せるようにしたガジェット(面白い小物)。自立スタンドとして使えるなど実用性も備えている。アップルが昨年9月に発売したiPhone6向けを年末に商品化したところ、動画サイトやSNSで話題となり、国内はもとより海外からも注文が舞い込んで「生産が追い付かない」(藤澤秀行社長)とうれしい悲鳴を上げている。

 トリックカバーの第一弾は3年ほど前、今でこそかなり広まったが、当時としては先進的なクラウドファンディングの手法により、多くの小口資金を集めて開発した。目新しさが注目され、平成25年度ものづくり白書で取り上げられたりもしている。「既存のやり方にとらわれずに、先駆者的に新市場を開拓する」、「世の中の価値観は、ブランド品をステータスと思うより、人と違うオリジナルなものを持つことに価値を見いだすように変わっている」。こうした藤澤社長のビジョンや時代認識が、クラウドファンディング発のヒット商品を生み出した。

 同社は半世紀近く前の昭和42年に金型メーカーとして発足。その後、縁あってプレス、板金、溶接を得意とする数社の中小製造業者を統合し今日に至る。社員数は40人弱の規模ながら、設計、試作品製作から量産品製造までの一貫体制を築いている。2代目となる現社長は「町工場から楽しいものづくり」を標榜し、受託業務と自社オリジナル製品の両にらみでの更なる成長発展を目論んでいる。

 現在、トリックカバーに続くガジェット系オリジナル製品として、iPhoneを使った360度回転画像撮影システムを開発し拡販中。藤沢社長は「オリジナル製品の比率は、まだ、売り上げ全体の10%ほどだが、30%に引き上げたい」と先を見通す。製造業の近未来の在り様を“21世紀の産業革命”と捉えて話題を呼んだ書籍「メイカーズ」(クリス・アンダーセン著)では、従来とは異質の中小・ベンチャー製造業の台頭を予見している。ニットーはそんなメイカーズの先駆けとなって、輝きを一段と増しそうだ。

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