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ラジコンタイヤの町工場が、腹腔鏡手術の訓練用品に照準
(15/02/12)

 「以前は人と車とタイヤが3分の1ずつの比率だった。今は、タイヤが全体の7割を占めるほどの重みを持っている」。寿技研(埼玉県八潮市)の高山成一郎社長が説明するのは、ラジコンカーの走行性能を決める3要素について。その一番重要なタイヤ製造に携わるのが寿技研。同社では工学院大学と産学連携プロジェクトを立ち上げるなどで、ラジコンタイヤの性能向上に日々、励んでいるところだ。

 ラジコンカーは世界中に多くの愛好家がいて、世界選手権が行われ、プロのドライバーも少なからず存在する。もっとも「世の中全般が趣味にお金を使えなくなってきたためか、10年前がピークで、その後、市場は縮小傾向にある」(高山社長)。創業間もなくの、今から30年ほど前からラジコンタイヤを製造している同社は、ラジコンタイヤを柱に、各種機械加工や部品・自動機・専用機の製造を手掛ける典型的な町工場。そんな寿技研に、細くなってきた柱を補って余りある新たな大黒柱が現れた。

 「腹腔鏡手術トレーニング用品」がそれで、製品化して2年足らずで「売り上げ全体の3分の1と、ラジコンタイヤと同等の規模に成長した」(同)。たまたま、外資系大手医療機器・医薬品メーカーに勤める、高山社長の友人から頼まれたのがきっかけとなった。腹腔鏡や内視鏡による低侵襲治療は、器具の進化や保険の適用などから、ここ数年で急速に普及した。半面、医師が手術をするまでに欠かせない訓練のための装置が不足し、医療事故も起きている。寿技研の製品は、そうしたギャップを埋めるものとして登場した。

 高山社長は「他社が商品化しているのは、高価で本格的な訓練装置。当社のものは安価な簡易版で、そのニーズが大きい」と説明する。ゴッドハンドと呼ばれる腹腔鏡手術の名人が「1日休むと取り戻すのに3日かかり、1週間だと1カ月かかる」と話したとの逸話があるほど訓練は大切。段ボール箱に穴をあけた手製の訓練装置を使って、日常的に訓練している医師も少なくないという。高山社長は病院や学会に足しげく通って、そんな実情を把握し、医師たちの声を製品開発に反映させた。そこには、ラジコンタイヤのスポンジ加工の技術が、訓練に欠かせない模擬臓器の作製に生きるとの“巡り合わせ”もあった。

 10年前に創業者の父親を継いだ2代目社長の高山氏は、手術トレーニング用品を「一生に一度、出合えるかどうかのテーマ」と捉え、製品群の拡充に意欲をみせる。同用品は今年1月、埼玉県が、新たな事業展開や革新的な技術開発に挑戦する県内企業を表彰する「渋沢栄一ビジネス大賞」の特別賞に選ばれた。中小企業の医療・介護機器参入が時流ともなってきた折、そのトップランナーの一社、寿技研の疾走ぶりが見ものである。

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