会社を良くする「経営の教科書」
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経営の教科書
(2017.4.10)

第78回 企業の出口戦略について(8)

 ゴーイング・コンサーンを前提とすれば、中小企業の出口は「事業承継」か「M&A(結婚)」に絞られるということ、併せてそれぞれの出口の違い、更にはその準備には相当の時間を要することを前回までにお伝えしてきました。

 今回は、ゴーイング・コンサーンを前提としない、つまり、自分の代で会社を閉じてしまう場合について皆さんと考えてみます。「清算」と呼ばれる出口ですが、これは結構難しいことです。そうであるにも関わらず「後継者がいないなら閉じてしまえばいいんだよ」と簡単に考えている経営者が多いように思います。

 具体的に整理をすると、先ず会社を清算するには、全ての債務を返済しなければいけません。銀行借入はもちろん、買掛金や未払外注費、社員への未払い給与、社会保険料等々です。簡単な話です…。が…、それを実行できる会社は存外少ないのです。

 是非自社の貸借対照表を確認して下さい。今ある現預金で全ての負債を返済できますか?現預金以外にも、棚卸資産や機械設備、車両や不動産等々といった資産もあります。しかし、それらの資産を現金化したら一体いくらになるでしょう?帳簿に載った資産を売却してもほとんどの場合、その額は帳簿の額より小さくなります。もっと言えば、電話加入権のように売りたくても金額すらつかない資産も帳簿に載っていることさえ有るのです。

 更に、負債には帳簿に載っていない社員への退職金や保証債務等がある場合がほとんどです。つまり実際の資産は帳簿より少なくなり、負債は帳簿よりも大きくなってしまいます。結果的に会社を清算したくても債務が弁済できないために清算できないという会社がほとんどです。

 今回で、会社の出口についてのお話は終わりますが、「後継者もいない」「MAは考えたことすらない」「清算はしたくてもできない」と、ズルズル経営を続けても良いことはありません。できるだけ早く会社の出口についてお考え頂くことをおすすめいたします。

 もし、出口について心配なことがありましたら、ご遠慮無くこちらまでご連絡下さい!
 togosenryaku@kusumoto-jp.net