会社を良くする「経営の教科書」
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経営の教科書
(2017.3.7)

第76回 事業戦略としてのM&A

 前回までに「事業承継」と「M&A」を対比しながらそれぞれの違いについての理解を深めてきましたが、今回は特に多くの方に誤解されているM&Aについてもう少し説明を加えさせていただきたいと思います。

 倒産企業の平均寿命は23.5年(2014年、東京商工リサーチより)だそうで、年々その寿命は短くなっているようです。マーケット変化の激しさ、厳しさを思い知らされます。企業が展開する事業は@導入期、A成長期、B成熟期、C衰退期というサイクルを歩みますが、平均寿命はこのサイクルが20年以下であるという現実を現しているのです。簡単に言うと思いついたビジネスで一山当てて、しぼむまでが約20年ということになります。

 つまり、ゴーイング・コンサーンを実現するには、10年程度のサイクルで新たな挑戦を繰り返していかなければならないのです。新規事業への挑戦は中小企業にこそ必要な命題と言えます。とはいえ新規事業にはリスクがつきものです。

 新規事業に取組む際の主なリスクは3つに整理できます。(1)資金、(2)人材、(3)ノウハウの3つです。これらのリスクを最小化する一つの方法がM&Aといえます。新規事業進出をM&Aで考えれば、既に確立したビジネスモデルと人材、ノウハウを瞬時に手に入れることができるからです。

 その際に気を付けることとして、M&Aによって手に入れた新規事業を「成長期」の事業に仕立て直すことが出来るかどうか?の見極めがあります。

 譲渡される事業は既に「成熟期」から「衰退期」の場合がほとんどでしょう。その事業を自社が吸収することで、何らかのシナジー(相乗効果)が創造され、新たな価値を生みだすことに繋がるか?という発想が重要なのです。そうでなければ、単に衰退に向かう事業を増やしただけ…。ということになりかねません。

 そこで、経営者の皆様に考えてほしいのは「自社の弱点」です。「もっとこうなれば我社の業績は上がるのに…」とか「◯◯が足りないからうちはもう一歩伸びないんだよなぁ〜」という弱みをM&Aで補えないか?という視点で考えると、意外に異なる業界の中にその解決のヒントがあったりします。そう考えると、弱点は大きな価値に転換できるのです。弱点を見るのは嫌かもしれませんが、自社のゴーイング・コンサーンの為に勇気を持って弱点を掘り起こしてみてはいかがでしょうか?