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経営の教科書
(2017.1.12)

第72回 企業の出口戦略について(4)

 前回に引き続き、以下の表から事業承継とM&Aの対比を見ていきます。

事業承継M&A
(1)印象が良い(日本の伝統)印象が悪い(誤解による)
(2)比較的早期に継承者が決まる後継社が見つかるか不確定
(3)企業価値を引き下げるプランが必要企業価値を高めるプランが必要
(4)承継後も責任が残る承継後は責任から開放される
(5)相続と合わせたプランニングが必要M&Aのみでプランニング可能
(5)後継者の資金調達支援が必要後継社の資金調達支援は不要
(6)創業者利益は退職金創業者利益は株式譲渡の対価
(7)主な外部相談相手は税理士や銀行主な外部相談相手は銀行かコンサル

 (2)を見て下さい。ご子息や親類縁者が後を引継ぐことになる事業承継では、比較的早い段階から後継者育成や人脈、ノウハウの引継ぎをスタートできますが、M&Aでは必ずしも良いお相手が、良いタイミングで見つかるとは限りません。譲渡したいと思っても何年も相手が現れないということも現実的にはあり得ます。

 では、後継者がいない社長はいつ頃からM&Aの準備を始めれば良いのでしょうか?答えは、「できるだけ早く」です。もっと言えば「今から」となります。例えば、あなたが「10年後くらいが引退時期かな?」と思っているとします。そんなあなたが今からM&Aの準備をするのは流石に早すぎますか?…。そんなことはありません。

 お相手が見つかるまでに貸借対照表を整理し、「企業価値を高め」より相手が見つかりやすい会社にすべきです。では、もし、お相手が想定よりも早く見つかったら?それも問題ではありません。良いお相手なら時期を待たずに縁談を進めても良いですし、引継ぎに時間をかけることもできます。M&Aのつもりで準備していたのに、急に後継者が現れたら?その時は事業承継に切り替えればいいのです。

 そう考えていくと、出口戦略の選択を先延ばしにすることの方がデメリットは大きいということがお分かりいただけると思います。是非、出口の決定はできるだけ早期に!という意識をお持ち下さい。