会社を良くする「経営の教科書」
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第59回 個人の限界を超える会議(当日の運営)


 前回、生産的な会議(個人の限界を超え、具体的行動に結びつける為の会議)にするための事前準備についてお伝えしましたが、今回は「当日の運営」についてお伝えします。
 会議の運営当日において大切なのは、事前準備で決めた「Role(役割)」を各人がきちんと遂行していくことになります。そこで、それぞれの役割を担ったメンバーが果たすべき責任について詳述します。
■ファシリテーター(進行役)
 ファシリテーターには、会議に参加したメンバーから(1)意見を余すところなく引き出し、(2)メンバーのコンセンサスを得ながら、(3)会議のゴールに到達させることが求められます。
 (1)の意見を引き出すために重要なのは、意見に対して「それは良い意見です」とか「そのアイデアは良くありません」評価をするための発言を、自分自身はもちろん周囲のメンバーにもさせないことです。その行為は、既成概念を超えるようなアイデアが生まれる風土を自ら喪失させているようなものだからです。むしろ、全員が「?」と思うような発言が出たらチャンスです。その発言の背景や意図を丁寧に聴きとっていくと、時に大変価値ある発言だと気付かされたりします。自分が正しいわけではなく、みんな真剣に考えてそこにいるのだから、みんなから学ばせてもらいたいということを意識がファシリテーターには求められます。
 (2)のコンセンサスですが、ファシリテーターは「コンセンサスが取れた状態」について明確に定義しておく必要があります。コンセンサスの取れた状態とは、会議の結論に対し「その結論には私の意見も含まれている。私はその結論でいい」と、全てのメンバーが受け止めている状態です。そうです、だからこそ(1)の全員の意見を引き出すことが重要になるのです。
 (3)のゴールに到達させるについては、(2)のコンセンサスが重要になります。単に結論に至れば良いわけではありません。ですから議事を多数決で決定するというのは最も愚かなゴールの方法です。数の論理で少数意見を押しつぶしてはコンセンサスが取れないからです。ソニーの創業者である井深氏は、長時間に及んだ会議が終盤差し掛かった夜中に、一人異を唱える社員の発言を受けて「もう一度最初から議論をやり直そう」といったそうです。この粘りと会議の結論に対する責任感がファシリテーターには求められます。
 航海を続ける企業が舵取りをするために会議はとても重要です。つまりは、その会議を進行するファシリテーターの存在は組織の生命線なのです。さて、あなたの会社には優秀なファシリテーターが何人いますか?自分自身を含め、ファシリテーターの育成を意識してください。貴方の会社の生命線なのですから。