会社を良くする「経営の教科書」
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第51回 採用基準が能力的物差しのみになっていないか?
(実行力 その8)



 会社(船)の船長である社長に「社員の採用基準」についてお尋ねします。以下の選択肢から御社の現状に最も近い状態を選択してください。

Question 社員の採用時に、会社に必要な能力のみでなく、会社に必要な価値観(ものの考え方)を考慮した選考が行われていますか?

 Level1)  全く考慮されていない。

 Level2)  考慮した選考が実施されている。

 社員の採用時に大切なのは、その社員の持っている価値観です。組織の価値観を社員が共有できなければ、いくら優れた能力を持っている社員でもその力を発揮することはできません。

 経営の神様と言われたGEのJ・ウェルチ氏はCEOに就任当初、全ての社員を価値観の共有と、能力という物差しで評価し、図のような4つの部屋に分け、それぞれに次のように声を掛けたそうです。

  (I) (II) (III) (IV)
高い能力を保有 × ×
価値観の共有 × ×

(T) の部屋…あなた方は毒にも薬にもならない、ゆっくり辞めていって下さい。
(II) の部屋…この会社をおかしくしているのは皆さんだ!直ぐにやめてくれ。
(III) の部屋…申し訳ない、上司に恵まれていないのだ、すぐに配置転換をしよう。
(IV) の部屋…この会社の未来の為に、是非皆さんの力を貸して欲しい。

 なんと(II)の部屋には、ノーベル賞候補者もたくさん含まれていたといいます。ともすると、私達は能力さえあれば会社に貢献できるという錯覚をしてしまいますが、むしろ能力は組織の遠心力を助長し、組織と社員、社員と社員の関係性を断絶させてしまうという弊害を生んでしまうことをJ・ウェルチは見抜いていたのです。組織において価値観の共有というテーマがいかに大切かを物語るエピソードです。

 多くの企業が能力的物差しを多用して社員の採用の是非を論じますが、それは間違いです。ではいかにすれば採用において価値観を把握できるのか?残念ながらそこには明確な答えはありません。しかし、コンピテンシーやEQといった研究がたくさん成されています。それらを学び、創意工夫を加え、自社の採用に活用することが重要です。

 具体的な手法の事例については、次回以降「人事評価」でご紹介します。

 さて、御社は採用において価値観を測る物差しを用いようと努めていますか?正解はなくとも価値観を明らかにするための創意工夫を常に続けていきましょう!明日採用するたった一人の社員が、会社の未来を大きく変える力を持っているかもしれないのだから。