会社を良くする「経営の教科書」
経営の教科書
一覧はこちら

第47回 組織全体からみた労働分配率を明確にしているか?2(実行力 その4)


 前回は「適正労働分配率」の「前提」となる考え方が、「顧客満足」「社会貢献」「社員満足」の3つの関係性から成り立っていることをお伝えしました。今回は具体的な「率」の設定について考えてみたいと思います。

 労働分配率は「付加価値を生み出すのにどの程度の人件費を投下したか?」を見るための指標です。裏を返せば「今の我社の人材でどの程度の付加価値を生み出しているか?」を表しており、「値」が低ければ低いほど人事戦略が優れているという事になります。

 計算式上、「率」を低くするためには「人件費額(以下、給与)」を引き下げれば良いのですが、その考え方は現実的ではありません。何故なら、優良企業を検証するとほとんどの企業が労働分配率は低いにもかかわらず、一人当りの給与は大変高いのです。逆に労働分配率の高い中小企業の一人当りの給与は総じて低いのが現実になっています。(是非、上場企業のIR情報を探してみて、自社の実態と比較してみてください)

 「労働分配率は下げながら、社員の給与を高くしていく」という計算式上は矛盾することを統合し、答えを出すことを求められるのが「経営」の大きなテーマです。この労働分配率と給与の関係性を全社員が理解し、日々付加価値を高めて行くことを考え、ビジネスモデルそのものに社員一人ひとりがアプローチしている組織は本当に強い組織であるといえます。

 最後に、具体的な率を例示します。あくまでも、それぞれの会社が置かれた個別的状況によって適正労働分配率は異なることが前提ですが、敢えて一つの目安を提示するならば「33%」です。これは企業が生み出した付加価値を「税金(国家)、自社(内部留保)、社員」の3者で分配するという考え方をベースとしています。皆さんの会社はどうですか?

 社員の成長を促し、組織全体と個人の関係性を深めるための人事制度を構築する前提として、現時点で自社独自の「適正労働分配率」が定められていないのなら、すぐに適正労働分配率を明確にしましょう!もし明確になっているのならば、今期よりも来期、来期よりも再来期と、給与を上げながら労働分配率を引き下げていきましょう!それが社長(船長)の最も大切な仕事なのだから。