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第46回 組織全体からみた労働分配率を明確にしているか?1(実行力 その4)


 会社(船)の船長である社長に「人事制度(人を育てる仕組み)」についてお尋ねします。以下の選択肢から御社の現状に最も近い状態を選択してください。

Question 理念・目的、戦略や戦術、売上高や利益、キャッシュフロー等々、組織全体からみた適正労働分配率を定義、算出し、決定していますか?

 Level1)  適正労働分配率を定義、算出し、決定している

 Level2)  適正労働分配率は決定していない

 多くの場合、会社が利益を出しているということは、会社が「顧客満足」を実現しているからであり、会社が「社会貢献」をしていることの「証(あかし)」だといえます。この「顧客満足」と「社会貢献」と同時にもう一つ考えなければならない指標があります。それが「社員満足」です。

 今回取り上げる「適正労働分配率」について考えるには、前提としてこの「顧客満足」「社会貢献」「社員満足」の3つの関係性について考えることが必要になります。

 まず「満足度とは何か?」について明確にしておく必要があります。人間の満足には「満足要因」と「不満足要因」があり、この2つには相関関係がないと言われています。つまり、不満足要因が幾ら取り除かれても満足要因が満たされることはなく、満足要因が幾ら満たされても不満足要因が取り除かれることはないのです。

 不満足要因とは一般に環境衛生要因と言われます。給与や職場の安全性、福利厚生といった要因です。それらは改善されてもすぐに次の欲求を生み、新たな不満足要因を増幅させます。昇給しても喜ぶのはせいぜい1、2ヶ月でまた不満になるという話です。

 一方の満足要因は、「働きがい」や「使命感」といった人間の内発的動機を支えます。これは人間の主体性を引き出す要因となり、目の前の困難に挑戦するための原動力となります。つまり、満足要因を充実させていくことが真の「満足」なのです。

 社員の満足を支えているのは「私は仕事を通じて社会に貢献している」という「誇り」やお客様からの深い「感謝」から得られる感動なのです。先に述べたように社会に貢献していれば会社に利益が出ます。利益が出れば結果として給与や賞与、福利厚生に反映されます。この好循環を創り出している組織は本当に強い組織です。

 あくまでも「社会」と「会社」と「社員」の関係性を繋ぐ指標が「適正労働分配率」であり、結果の指標ではなく社長の考え方を明確に反映した指標でなければならないのです。次回は、今回の前提を踏まえて、具体的な労働分配率の数値化についてお伝え致します。