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第36回 社長は「財務」をどう学べばよいのか?


 前提として「会計」と「財務」は異なる。社長は「会計」について学ぶ必要はなく、「財務」についてもその使い方を把握すればよい。おおよそ「会計」や「財務」は社長が学習するというカテゴリーに入れるものではない。にも関わらず「会計」や「財務」の知識が乏しいことにコンプレックスを感じている社長が多い。はっきり言うが、社長が「会計」や「財務」について学ぶ必要はない。

 会計とは、過去の取引を数値化し、その数値を財務活動によって経営に役立たせるもの。つまり、過去の実績を整理するのが会計。

 一方、財務は資金を調達・運用・管理することであり、未来を組み立てるもの。「会計」は未来の取引を予測し数値化する為にも活用される。それを未来会計と呼ぶが、時間軸が変わるだけで求められる知識や技術は過去会計と大差ない。

 さて、あなたが車を運転している様子を思い返して欲しい。車を安全に運転するたには自分と周辺の情報を正確に把握しなければならない。道具としてスピードメーターやタコメーター、ガソリン計やバックミラー、サイドミラー…。運転手は常にそれらから情報を受取り、その情報を元に判断し運転していく。

 社長の役割をこの運転手に重ねて欲しい。経営の状況の一つの断片が財務を通じて情報として社長のもとに届けられる。財務の数値が正確であることは経理担当者や会計事務所が担保してくれているとすれば、社長はその情報を元に正しく判断し打つべき手を打っていく。それだけでいいはず…。

 自動車学校でスピードメーターの作り方を学ばなかったように、財務諸表の作り方を社長が学ぶ必要はない。それなのに、財務の勉強をするといって電卓を握りしめている社長をみると、運転するのにスパナを握りしめているドライバーを思い浮かべる。

 このコラムでは一貫して、財務諸表を活用することで正しい情報を手に入れる方法をお伝えしてきた。是非、航海士である会計事務所を活用し、ゴーイング・コンサーンを実現していただきたい。次回を財務編の総まとめとし、それ以降は定性的な内容にテーマを移していきたい。