会社を良くする「経営の教科書」
経営の教科書
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第30回 借入の返済可能年数(経営会計 その3)


 何故か多くの中小企業が銀行から借入をしている。更に、その借入の目的が資金繰りの為だという状況が、実はとんでもなく危険な事態であるという認識が希薄な経営者が多い。中小企業が借入をする理由は、大きく次の3つに整理できる。

1)創業時や設備投資等に伴う明確な回収計画が裏付けとなった借入

 この場合は計画に狂いが生じない限り、将来借入はすべて返済される前提なので問題は極めて少ないと言える。問題が生じる要因は一点、経営者の思考の深さと、確かさ。

2)運転資金の借入

 これは絶対にしてはいけない借入。自らの事業がもたらした儲けでは資金繰りが回らないのなら、言い方は厳しいがその事業は社会から必要とされていないのだ。だからいくら借入でその場をしのいでも、継続はできない。企業における共通のテーマが「ゴーイングコンサーン(永続的発展)」だとする当コラムにおいては、そのような企業はできるだけ早くソフトランディングの方法を探るべきだということになる。

3)目的なく金融機関に要請され、それに応えた借入

 無駄な金利を即刻止めるべき。銀行とのお付き合いが大事なら、その金利は交際費に計上して欲しい。「何かあった時の為に借りられるときに借りておく」という考えがあり、その考え方は部分的には正しいが、原則「借入」でお金を貯めておくのではなく「儲け」でお金を貯めておきたいのは当然。

 借入のない会社の社長は、是非そのままの経営を継続して欲しい。借入をする必要に迫られた際には、最も社長の会社を大切にしてくれる人に必ず事前に相談しよう。

 借入のある会社の社長は、自社の借入残高を税引後当期利益と減価償却額を足した数値で割ってみよう。それが借入金の返済可能年数になる。いったい何年で無借金になるだろうか? 2年? 5年? 10年? もっと?…。もし仮に、その年数で全ての借入を返済しても手元の現金は一円も増えはしない。例え厳しい現実でも、まずは無借金になるまでの道のりを明確にしよう。わからない場合は航海士である会計事務所に尋ねてみよう。