会社を良くする「経営の教科書」
経営の教科書
一覧はこちら

第29回 役員報酬の増減率と額(経営会計 その2)


 資本と経営が分離していないケースがほとんどである中小企業において、最終利益を役員報酬で調整する場合が多い。つまり、利益額が大きくなれば役員報酬を増加させて法人税の節税をはかり、逆に利益額が確保できない場合は役員報酬を下げて利益確保をはかる。

 法人税額を意識して最終利益を調整していれば、本当の会社の体力は見えなくなってしまう。仮にA社・B社は共に5期連続で1千万円の利益を出していたとする。表面的には稼ぎ出す為の攻撃力は同じに見えるが、役員報酬を確認するとA社は毎期200万円ずつ役員報酬を下げており、B社は逆に毎期200万円ずつ役員報酬を上げていた。当然攻撃力はB社の方が上になる。

 また、極端に役員報酬が多い場合や少ない場合も同様に、会社の経営体力の判断を誤る場合がある。業界平均や会社規模平均の役員報酬に置き換えてみて自社の攻撃力を確認するという指導をする方もいるが、そんな調査は面倒くさいしどこまで信憑性があるかわからない。もっとよい物差しがある。ズバリ、その会社の社員の平均給与。

 しかし、社員給与の平均の何倍の役員報酬が適正なのかという基準に答えはない。その基準は自社の理念や目的に照らして導き出される必要があるのだから、当然会社ごとに異なる基準が生まれる。

 特に、中小企業においては「会社の財布」と「経営者の財布」を分けて考えることはできない。会社に不測の事態が生じた時、社長個人の財産を会社に投入する事だってあるからだ。だからこそ、社長はある程度の個人資産を蓄えておく必要がある。一般的には、社員給与の平均の5倍の役員報酬が標準だと言われている。是非は別として欧米では数十倍というケースだって全く珍しい話ではない。

 さて、あなたの会社の役員報酬と利益の関係はどうなっているだろうか? 社員給与の平均と比して、安心できるだけの報酬を確保できているだろうか? 改めて、自社の基準を明確にし、自社の決算書を確認してみよう。