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第28回 人件費維持力(経営会計 その1)


 前回より経営会計についての話をスタートしたが、今回はその具体的指標の一つである『人件費維持力』について考えてみたい。

 『人件費維持力』とは、たった今会社の収入が止まった(つまり、この瞬間からお金が入ってこない状態)と仮定した場合、社員の給料をどの程度の間、会社内に留保しているかを表した指標で、○ヶ月分と表現される。

 前回詳細を説明したが、そもそも経営会計の具体的目標は会社の理念や目的によって異なってくる。よって、○ヶ月分が正解という指標は存在しない。但し、一般的には36ヶ月分(3年分)の人件費を確保すべきだといわれている。何故なら、3年分の蓄えがあれば、「信用回復期間の確保」や「新たな戦略の構築」、「社員の退職金原資」等という視点でも対応が可能だからだ。

 視点を変えてみると、社員を一人採用した時点で、その社員の36ヶ月分の簿外負債がB/Sに張り付いたと考えるのが経営会計であり、経営会計の視点で見たB/Sだということになる。更に言えば、人件費以外の固定費を含めた『固定費維持力』が何年分の蓄えとなっているか? という見方も同様である。

 実はこの人件費維持力は、皆さんご存じの某ゲーム会社が18年間分、外資系の医薬品会社では24年間分の人件費を社内に留保しているというデータもある。両者とも大変すばらしい経営哲学を持った会社であり、経営会計が理念経営からしか派生しないことを証明しているといえる。

 さて、皆さんの会社の『人件費維持力』は何ヶ月分あるだろうか? 決算書の現預金の額を、年間の人件費(給与+賞与+法定福利費+教育研修費等)の額で除してみよう。その結果は、あなたの価値観(経営哲学)に照らして充分だろうか?