税務調査の法的知識
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第50回 個人通帳を要請された場合の反論方法
(15/12/16)

 「個人の通帳を見せなければならないか?」で書いたとおり、税務調査においては、原則として個人(生活用)の通帳を見せる必要はありません。

 個人事業主・法人で共通で問題になるのは、調査官が「個人の通帳を見なければ、事業の収入とすべき金銭が入金されているかどうかがわからない」と主張してくる場合でしょう。これは「卵が先か、鶏が先か」の議論です。

 このような調査官の主張を覆す根拠として、国税庁のホームページに下記の記載があります。

「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)

問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。

【回答】
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。

 ここで明記されている通り、

個人預金について事業関連性が疑われる場合
⇒ 個人の通帳も見せなければならない(質問検査権の範囲内で受忍義務がある)

のであって、事業関連性が疑われもしないのに、個人の通帳を見せてください、は根拠がないとわかります。この違いは非常に重要なので注意してください。

 このように、個人・法人であっても、原則として「生活費の通帳を見せてください」は質問検査権の範囲を超えた要請になります。

 調査官が個人用の通帳を要請してきた場合は、上記の通りきちんと根拠をもって反論してください。