税務調査の法的知識
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第48回 調査対象年分に誤りがあれば調査年分は延びるのか?
(15/11/18)

 「事前通知内容以外の調査」において、事前通知内容を超えた調査年分の延伸について書きました。

 その一方で、この規定が誤解を受けている現実を踏まえて、もう少し深堀して解説してみましょう。

 国税通則法第74条の9を読むと、調査対象年分において誤りがあれば、それをもって調査年分が延びる根拠となるように誤認する人が多いのですが、それは違います。この規定はあくまでも、調査対象年分を延ばす要件ですから、

「調査対象年分=誤りがある」

ことが要件なのではなく、調査をしている過程で、

「調査対象期間よりも前の期間=誤りがありそう」

ということが、調査対象年分が延びる要件ということです。そう解釈しなければ、事前通知の年分を超えて調査対象期間を拡大する要件にはなり得ないからです。このように解釈する、明確な根拠としては、「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)」(平成24年11月 国税庁法人課税課)に下記の質疑応答事例が載っています。

問1−56
事前通知した調査対象期間以外の課税期間につき、質問検査等を行う場合とは、具体的にどのような場合をいうのか

(答)
事前通知した調査対象期間を調査している過程で非違を把握し、その非違が認められる取引先との取引が調査対象期間よりも前の課税期間にも存在するなど、調査対象期間よりも前の課税期間にも同様の非違が疑われる場合などが該当します。

 このあたりは、調査官も勘違いしているケースが多く、調査対象年分に売上計上漏れがあったとして調査対象年分を延ばそうとする調査が横行していますが、それは間違っているということなのです。あくまでも、

事前通知をした調査対象期間を調査した結果

調査対象期間よりも前の期間に非違が疑われることとなった場合(過去に同様の取引があるなど)
→調査対象期間を延ばすことができる

という論理であることに気を付けてください。これらの要件を満たさず、調査期間がいたずらに延ばされるケースが多くみられます。ぜひ、注意してください。