税務調査の法的知識
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第44回 多忙を理由に税務調査を延期できるのか?
(15/09/18)

 事前通知でいったん決まった日程を、調査官に連絡して延期してもらう場合、税務署からの心象が悪くなることを気にする方も多いことでしょう。

 税務調査日程の延期は、調査官が嫌がるという意味で、確かに考えるべき問題ではあるのですか、それでは法的にはどうなっているのでしょうか。

国税通則法第74条の9第2項
税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第1号又は第2号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。

 この法律規定により、事前通知での決定事項を納税者側から変更する場合は「合理的な理由」が必要であることがわかります。

 では「合理的な理由」とは、具体的にどのような場合を指すのでしょうか。この条文の解釈通達を見ると、

4−6(事前通知した日時等の変更に係る合理的な理由)
法第74条の9第2項の規定の適用に当たり、調査を開始する日時又は調査を行う場所の変更を求める理由が合理的であるか否かは、個々の事案における事実関係に即して、当該納税義務者の私的利益と実地の調査の適正かつ円滑な実施の必要性という行政目的とを比較衡量の上判断するが、例えば、納税義務者等(税務代理人を含む。以下、4−6において同じ。)の病気・怪我等による一時的な入院や親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、納税義務者等の業務上やむを得ない事情がある場合は、合理的な理由があるものとして取り扱うことに留意する。

とあります。ここでのポイントは2点で、

(1)仕事関連で多忙というのは延期理由になる

とともに、

(2)(納税者ではなく)税務代理人=税理士が多忙というのも調査の延期理由になる

ということは知っておくべき事項です。

 税務調査を延期したい旨を調査官に伝えた場合、応じてくれなければ、上記の根拠をもって、多忙であっても調査の延期ができることを主張してください。