税務調査の法的知識
税理士業界にフォーカスした“税務調査の法的知識”
一覧はこちら

第34回 通達を根拠とした否認指摘に反論する方法
(15/04/16)

 「通達課税は許されるのか?」にあるとおり、憲法により通達課税は許されていないといいながらも、現実は通達課税をされています。

 では、税務調査の現場では、通達を根拠とした否認指摘に反論する方法はないのでしょうか?

 通達を杓子定規に適用し、否認指摘してくる調査官には、通達の「前文・説明文」を読ませるべきです。

 法人税基本通達の「前文・説明文」の一部(該当箇所のみ)を転載します。

【法人税基本通達の制定について】(昭和44年5月1日)
 規定の内容についても、個々の事案に妥当する弾力的運用を期するため、一義的な規定の仕方ができないようなケースについては、「〜のような」、「たとえば」等の表現によって具体的な事項や事例を例示するにとどめ、また、「相当部分」、「おおむね…%」等の表現を用い機械的平板的な処理にならないよう配意した。
 したがって、この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。
 いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい。

 「前文・説明文」とは、その制度(ここでいうと法人税基本通達)の「趣旨」を定めたもので、通達を運用する際のルールになります。

 ですから調査官は、「前文・説明文」の趣旨に逸脱せずに、通達を運用することが明文化されています。

 上記のとおり、通達を運用する側の調査官も、画一的に通達を用いることは許されないのです。