税務調査の法的知識
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第 5回 質問検査権の範囲はどこまでか
(14/02/20)

 税務調査で常に問題になるのが、調査官に「何を見せなければならないか」でしょう。

 国税通則法の質問検査権を規定する法律(第74条の2)には、「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。」と明記されています。つまり、「帳簿書類」「その他の物件」を調査官に見せなければならないというわけです。

 ここにいう、「帳簿書類」とは非常にシンプルで、税務申告書やその付表(明細を含む)、決算書やそのもととなった元帳の類であり、この判断に迷うことは実務上ないかと思います。

 一方で、「その他の物件」ですが、これについては通達等にも明示がなく、判断に迷うところです(いわゆる「不確定概念」と呼ばれるものです)。

 さてここで、税務調査はそもそもどういう目的で行われるものだったでしょうか。そこから考えてみると、この「その他の物件」を明確にすることができそうです。

 税務調査とは、「申告納税制度を担保するために行われる」ものです。つまり、各法人や個人事業主の方が、自らの所得・税額を計算して、自ら申告をする。その申告内容に誤りがないかを税務署が確認しなければ、脱税等が横行してしまい、申告納税制度が維持・担保できないというわけです。

 ここまで考えると、税務調査で提示義務がある「その他の物件」とは、「所得および税額を確認するために必要なものすべて」と判断することができます。

 例えば、棚卸資産(在庫)の確認。期末棚卸の金額が正しく計上されていなければ、売上原価を正しく計上することができず、ひいては所得および税額に影響することになります。ですから、在庫の確認を求められた場合は、調査官に見せなければならない、というわけです。