金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例16「条件変更及びその履行状況」


 金融検査マニュアル別冊の「事例16」に関しては、貸出条件の履行状況において、全ての貸出が手形貸付で約定返済への切り替えが行えず、期限延長による書き換えを余儀なくされている。しかし、財務内容はわずかだが債務超過でも黒字であり、延滞していないことから「正常先」と判断している事例です。

 財務状況から判断すると、現状黒字であり業績も回復傾向にあることから「正常先」と判断する事ができますが、金融機関では本事例のように固定資産を短期資金で賄い、長期間同額で期限を延長しているような貸出条件扱いの場合、本来、約定返済すべき貸出が長期間返済されず延滞しているとして考える必要があり「貸出条件およびその履行状況に問題がある」ことから「要注意先」以下と判断する必要があります。

 金融機関における「要注意先」評価とは、一般的に「金利減免、棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者」「元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者」「業況が低調ないしは不安定な債務者または財務内容に問題がある債務者」など、今後の管理上に注意を要する債務者を言います

 貸出条件要注意先としては以下の状態になっている先を表します。

  1. 金利減免・棚上げ、元本返済猶予先
  2. 当初返済期日に返済できずやむなく最終期日の延長をした先、および返済負担軽減のため返済条件を緩和した先
  3. 当初から極端に長期の返済契約がなされているもの等、貸出条件に問題のある貸出がある先

 但し、以下のような先はその根拠を示すことにより「正常先」として区分することができるとされています。

  1. 通常の返済期間等に条件変更後、約定どおり返済履行がなされ今後も確実に履行できると判断できる先
  2. 返済にしわ寄せがあっても、返済源資が明確になっている先

 本件事例の場合は、財務内容に問題が無いことから「正常先」として判断するのではなく、貸出条件が、本来の資金使途に適用され適切な条件で履行されているか否かを考慮しなければなりません。収支計画に基づき返済原資があると認められる場合は「正常先」として判定することは可能となりますので十分に説明できるか否かがポイントとなるのです。