金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例13「計画未達の場合のキャッシュフローの評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例13」に関しては、提出された収支計画の進捗状況について、前期未達成であった要因を金融機関と債務者が協力して分析し、営業力強化を図るべくPR活動をした結果、計画の7割程度の達成状況となっている。引き続き営業努力をしていることで来期は増収増益が見込まれ、借入金の返済期間延長をする必要はあるが約定返済開始の目途もたった事から「要注意先(要管理先)」と判断している事例です。

 本件事例は、金融機関が条件緩和(返済負担を軽減するために期間を延長したり、最終期限にしわ寄せする)を実施する際に、債務者から提出された収支計画を検証し返済能力を判定したが、実際のところ収支計画通り業績が推移していないものの計画未達成の要因を分析した結果、改善の可能性もあると評価したものです。今後の見込みでは十分なキャッシュフローを確保する事が可能で返済開始も見込めることから、計画が未達成であっても継続支援する事を前提に債務者区分を判断しているものです。

 つまり、経営改善計画の進捗状況や見通しを検討する際に、キャッシュフローの推移を重視することで債務者の状態を判断していますが、収支計画の基本を理解し進捗管理することが重要であるという点を示しています。

 赤字体質からの脱却と早期解消を実現し資金収支を健全な状態にするためには、以下の項目に焦点を絞り具体的な改善テーマを考えることがポイントとなります。

1.販売力の強化= 得意先顧客の管理状況、新たな顧客開拓の可能をマーケット状態から検証する

2.商品サービス力の強化= マーケットニーズに合致した商品サービス構成を維持するための仕入・在庫・開発計画を検証する

3.効率化の実現= 事業規模に合致した営業体制の整備、採算性を加味したコスト改革の可能性を検証する

 つまり、一定の利益を確保できる販売価格を維持できるか、採算がとれる価格で人気商品を販売する事ができるのか、確保できた利益の範囲内で営業活動できる企業体質に改革できるのかを検討する事が重要であり、損益分岐点分析に基づき「黒字化」改善策を策定することが基本となるのです。

 経済環境が厳しい場合、安易な希望的観測による売上増強による収支計画では実現性が乏しく、現状維持または現状を下回る(80%程度)売上を前提として、営業収支の黒字化、最終的には経常収支黒字化を実現するための「原価率の引き下げ」「営業経費の削減」を軸に、金融機関からの支援でもある金利負担の軽減策も考慮し経営改善計画を検討することが重要なのです。