金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例12「経営改善状況と今後の見通しの評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例12」に関しては、債務者から提出された事業計画に基づき、3年間元本返済を猶予すれば今後の収支は改善可能と判断し支援した先から、1年経過後の報告があったが、事業計画に沿った内容で業績が推移しており、今後の改善も見込まれることから引き続き支援の方針に変わりなく「要注意先(要管理先)」と判断している事例です。

 本来、経営支援を行うには、債務者が作成した経営改善計画書および計画に基づく収支計画書により、その信ぴょう性を検証、確認した上で対応する必要があります。しかし、中小小規模な企業の場合は、詳細な計画書を作成することが難しいことから、今後の事業計画等、債務者が作成可能な資料にもとづき、金融機関側が主体的に経営者や関係者から情報を集め、事業計画の実現の可能性を判断しながら、合理的な計画の作成を支援することが求められています。

 監督官庁が公表している「金融円滑化法」への対応指針では、金融機関は積極的にコンサルティング機能を発揮し、経営改善支援へ取組むことが求められていますが、債務者の実情を正確に評価するためには、以下の項目に関する情報収集が必要となります。

  1. 業績が悪化してきた理由は何なのか、
  2. 環境変化も加味した業界動向は今後どのようになるのか、
  3. 当該社の強みはなんなのか(技術力やサービス力、取引先の協力度合い等)、
  4. 業績回復を実現するだけの余力(資産や資金面)はあるか
  5. 経営者個人の資質や余力(経営意思、資産や資金面)はあるか

 本件事例に関しては、債務者が考えた事業計画を基に、金融機関が可能性を評価した結果、改善の可能性があると判断したものですが、個人資産を活用し借入金を返済する等、事業継続の意思が強く感じられる点もポイントとなります。金融機関側がいくら支援しようとしても、債務者および経営者との意思疎通ができていなければ実現可能な計画を立てたとしても効果を上げることができないケースも多々あります。

 日頃から「経営に対する考え方や会社の実情、今後の経営の方針等」を伝える努力をし、強固な信頼関係を構築することが重要となります。