金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例8「新商品・新販売経路開拓努力の評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例8」に関しては、金融機関が日頃の企業訪問や経営相談を通じて債務者の実態をきめ細かく把握することで、債務者のもっている高度な技術力と取扱商品に対する評判を見極め、新たな販売経路の開拓により業況改善が見込まれるとのことから「要注意先」と判断している事例です。

 中小・小規模の事業会社の場合、いくら高度で良い技術を持っていても、優れた商品を開発しても「販路」を開拓する事が非常に難しいことが想定されます。

 金融機関側が行う「コンサルティング機能」に関しては、特に業況が低迷している企業の場合、経営者の経営方針や事業計画、企業訪問による現場の状況や商品・サービスの売れ行き、取引先の評判等常に債務者の業況を注視すると同時に、扱っている商品やサービスの新たな販売先を見つけ出す支援方法はないか考えることも求められています。

 金融界では、取引先のニーズを集約し、それぞれのニーズに合致した企業同士を紹介する「ビジネスマッチング」への取り組みが積極的に行われていますが、業績が低迷している企業であっても、技術力や製品開発力、サービス能力等が優れており自助努力により経営改善が見込まれる債務者に対しては、取引先紹介や新しい販売手法(インターネット等)の提案等「販路拡大」や「仕入先開拓」等を目的とした情報提供により、業績改善を支援することが考えられます。

 事例のように、金融機関では、日頃から債務者との信頼関係を築き、且つ、金融機関が主体的に債務者の経営課題を把握・分析し、事業の持続可能性等を適切かつ慎重に見極めた上で、その類型に応じて適宜適切なソリューションを提案する活動を行うことで、今後の経営改善が見込まれることが説明できる場合、債務者区分を判定する際に当該要因を考慮し良い方向へ評価することが可能となります。

 また、単に取引先を紹介するだけではなく、外部専門家である中小企業診断士や税理士、経営相談員等からの助言や提案を受けたり、外部機関である地方公共団体や商工会議所、更には他金融機関との連携による新たな取引先の開拓によるビジネスマッチングの機会を増やすことや、高い技術力を持っている場合は、大手企業等の産業界や地域の大学の研究機関との連携による技術開発の支援等、様々な観点から債務者を支援する取組も考えられています。

 以上のような金融機関側が提供する様々な支援を受ける為には、企業が持っている技術力を活用した新商品開発への取り組み等、日頃から事業のあるべき方向性や事業方針等を金融機関側へ理解できるように体系化しておくと同時に、説明できるだけの要素を準備しておくことが重要です。