金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例6「技術力に対する他関係者評価の見方」


 金融検査マニュアル別冊の「事例6」に関しては、業績不振により連続赤字を計上していますが、当会社が保有する技術力について大手企業が高い評価を示し共同で事業を行っていることから今後の業績回復に十分貢献できることを金融機関との間の密度の高いコミュニケーションにより金融機関側が適切に分析評価することで「要注意先」と判断している事例です。

 事例5のように、企業が保有する技術力やサービス力に関しては、法律により保護されているものばかりではなく、当該手続きを行っていない場合でも、主要な大手取引先が当該技術力を高く評価し、安定した取引を維持している場合もあります。

 特に製造業の場合、高い技術力を持っている下請け企業を新製品の企画設計段階から参加させることで製品開発の効率化を目指す大手企業も多いことから、金融機関は日頃の営業活動の中で、債務者の主要な取引先の状況を確認すると同時に、取引先からの評判や業界内での評価等も参考に債務者の実力を評価しますので、主要取引先情報につては正確に伝えることが求められます。

 また、主要取引先の変化により企業の経営状態を評価するケースもあります。

 主要な取引先との関係が良好であり継続されている場合は、会社との取引に満足していることでもあり、一時的に業況が厳しくなっても取引先の支援等により改善する可能性がありますが、逆の場合は経営に重大な影響を及ぼすこともあります。会社が持っている技術力やサービス力について、主要取引先動向等も考慮しながら確認しています。特に、小規模な事業会社でも高い技術力を持ていれれば大手企業から取引の依頼もありますので動向には注意し、如何にして評価を高めることができるか考えています。

 事例のように、既存の技術力を他の分野へも適用する等主要取引企業と共同で研究を進めている場合は、研究そのものの実用性や実現時期等を確認し、今後の売上にどの程度貢献できるか、収益改善にどの程度寄与するのか具体的に検証した上で判断しています。日頃から銀行担当者とのコミュニケーションを密にするとともに、経営状態のみならず今後の経営方針や事業計画等の情報も適宜提供するよう努めることが重要となります。

 また、企業によっては、新しい技術が実用化され業績が大幅に回復して優良企業に成長しても、従来までの金融機関側の対応如何によっては取引を深めることはせず、現状維持か疎遠にすることもあることから、金融機関側では「現時点の業績のみで企業を評価するのではなく、企業の将来性等正しく評価できる目を鍛える」努力も行っていますので、日頃からの担当者等の応対に注視することも重要です。