会計事務所経営戦略レポート

2013年の時流予測と会計事務所の経営戦略
〜グレートカンパニーになるための経営のヒント〜

マイナス17.6%が意味すること

 皆様、こんにちは。株式会社船井総合研究所の竹内実門です。

 年に二回、本レポートをお送りさせていただいておりますが、おかげさまで16回目を迎えることができました。誠にありがとうございます。

 さて、冒頭の「マイナス17.6%」という数字に、心当たりがおありでしょうか?

 何人かの先生方にはお伝えしておりますが、この数字は、日本の税理士事務所・会計事務所の年間売上高の変化を表しています。つまり平成21年の年間総売上高に対して、平成22年はマイナス17.6%であった・・・ということです(出展:総務省統計局サービス産業調査年報)。言い換えると、たった一年間で市場が17.6%なくなった・・・ということなのです。

 マイナス17.6%・・・私はこの数字を見たときに、「そんなはずはない!」と直感的に思いました。税理士事務所・会計事務所の経営コンサルタントになって9年、厳しいといわれ続けている業界ですが、このような急激な市場の減少は過去にありませんでしたし、肌感覚でもそこまで厳しいとは感じていなかったのです。

 しかし、このことをお伝えした何人かの先生から、「思い当たる節がないわけでもない・・・」というご意見をいただいて、改めて税理士事務所・会計事務所の経営の現場を観察してみると、あながち間違ってはいないなぁ・・・と感じるようになりました。例を挙げて説明していきましょう。少し長くなりますが、大切なことですのでお付き合い願います。

 皆さまにもご経験があると存じますが、月額3万円の顧問料と4か月分の決算料で、年間報酬48万円のお客様がいたとします。そのお客様から「業績が厳しいので、顧問料を下げて欲しい」という依頼により、月5千円の値引きを行ったとします。そうすると、年間報酬は40万円となります。これは、16.7%の価格ダウンとなります。何か怪しい数字(16.7%)が出てきました。

 別の例で考えてみましょう。月額5万円の顧問料で決算料6か月分だと年間報酬は98万円です。同様に5万円を4万円に値下げしたとすると、年間報酬は72万円です。価格のダウン幅は26.5%になります。もちろん、全てのお客様が値下げ要求をしてくることは想定しませんが、比較的高額な報酬をいただいていたところが値下げになったり、平均的な報酬だったところが倒産や廃業により顧問先でなくなっていく現実を考えると、一つの事務所で10%〜15%の平均報酬単価の減少は、実際の経営の現場で起こってもおかしいことではありません。

 それでは、このような単価ダウンに対応するために、「客数を増やす!」という方策をとることを考えてみましょう。

 仮に顧問先が100件で、平均年間報酬が50万円だったとすると、15%の客単価ダウンで売上は750万円の減少となります。この分を新規客でまかなおうと考えた場合、750万÷42.5万円となり、必要な新規客は17.6件です。もちろんこれは顧問先の減少は考慮していませんので、純増で17件〜18件増やすことが必要となるのです。平均年間報酬50万円で、顧問先数が150件で売上7,500万円の事務所なら26件〜27件、平均年間報酬40万円で顧問先数200件で売上8,000万円の事務所なら35件〜36件となります。

 現実問題として、これらの規模の税理士事務所・会計事務所で、これだけの新規獲得を行うことは困難だと言えるでしょう。

 もう一方で、今後の経済環境や業界環境を考えた場合、皆さまにとって経営が好転する兆しはないのでしょうか?

相続税の改正による、相続税申告者数の増加・・・?
消費税増税による、駆け込み需要による業績向上・・・?
中小企業金融円滑化法終了に伴う、出口戦略・・・?


 残念ながら、どれも今までのやり方では、明るい未来は考えづらいでしょう。

 相続税の基礎控除引き下げによる、納税者の増加は、確かにマーケットの拡大につながる可能性があります。しかし、現実的には、相続財産が少ない方の申告マーケットは、その入口がほとんど、司法書士や行政書士などの相続手続き業務を行っているプレイヤーに持っていかれることが予想されます。

 なぜならば、この改正で対象となる顧客層に現時点でもっとも接点があるのは「相続手続き業務」だからです。このままでは、先行するプレイヤーの下請け的な業務を行うことになりかねません。

 消費税の増税についてはどうでしょうか?

 増税に伴い、駆け込み需要などで一時的に売上が伸びるお客様も出てくるでしょう。しかし、翌年にはそのリバウンドで業績が下がることが分かっているため、仮に収益が上がったとしても、皆さまの報酬に良い影響は出ず、むしろその後の厳しい経営環境を考えると、更なる単価ダウンを求められることも予想されます。

 モラトリアム法案の出口戦略においては、金融機関をチャネル化し、その出口戦略である「経営改善計画作成支援業務」を低価格でサポートする企業が出現しています。そもそも、資金繰りが厳しい企業から十分なフィーをいただくことも難しい状況になっています。


興味をもたれた方は 0120−950−270


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