コンサルティング情報

第16回 企業から必要とされる素質を持つ

 今回は私、桜井淳が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、今回は、私が中心にお手伝いさせていただいている「社会保険労務士事務所」についての情報をお届けします。

 社会保険労務士の先生の多くは法律家であるため、法律の知識を語らせているうちはまず問題ありません。(ここに問題のある社会保険労務士は論外です)しかし、「では、うちの会社ではどのようなことに注意して、事前に対応策を検討しておく必要があるのか?」といったビジネス形態や企業における固有の問題に、適切に対応できない社会保険労務士が数多く見受けられます。

 例えば、皆様の会社が顧問契約をされている社会保険労務士や、社会保険労務士資格を保有されている社員の方は、以下のようなことについて事前に疑問を呈してくれたり、アドバイスをしてくれたりしているでしょうか?

行政からの調査(例えば、サービス残業)に入られないようにするための事前の適切な対応策

パート社員を大量に雇用されている企業における、現場の生産性管理(例えば、パート社員同士のいじめなどが発生して現場の生産性が落ちているが、それをマネジメントする社員が対応できていないケースが多発しています)

労働組合との団交を円滑に進めるための事前準備や対応策

 単に手続をお願いするだけであれば、どの社会保険労務士でもできるはずです。しかし、上記のような対応が顧問社会保険労務士からなされていないのであれば、それは皆様の会社が契約をされている社会保険労務士自身の素養に問題があるか、顧問契約の中に労務管理に関するアドバイスが含まれていないかのどちらかだど思われますので、顧問社会保険労務士の選別をされるか、顧問料を含め契約の中身の見直しをされることをオススメ致します。

 中には、行政から調査が入ることになってしまったときですら、事前に動いてくれたり、アドバイスをくれたり、立ち会ってくれたりしてくれない顧問社会保険労務士がいたり、労働トラブルが発生して相談したら法律を杓子定規に捉えたコメントしかもらえなかった、というグチにも近い相談を企業の皆様から受けることが最近非常に多くなっています。

 実は、毎年数千の単位で、社会保険労務士資格を取得した方が事務所を開設しているわけですが、多くの新規開業した社会保険労務士事務所は、法律には詳しくてもビジネスの現場のことがよくわかっていません。わかっていないだけならキャリアを積んだり、収集する情報量を増やすことでいくらでも解決していくことができるのですが、ビジネスの現場を知ろうとしない単なる法律家でありたい方も中にはいらっしゃいます。

 私が開業したばかりの社会保険労務士事務所からコンサルティングの依頼を持ちかけられた場合には、まずは社会保険労務士の先生とお話をさせていただき、ビジネスの素養を身につければモノになる(企業から必要とされる素質を持っている)先生からのみ、依頼を受けることにしています。そうやって、コンサルティングの依頼を受けた社会保険労務士の先生に必ずやっていただいていることがあります。

 それは、「気づいたこと、発見したことを、毎日私にメールすること」です。仕事が忙しいと日々目の前の業務に追われてしまうということは皆様も経験されていることと思いますが、社会保険労務士の先生が自分の目の前の業務に追われていると、上記したような単なる法律家になってしまいがちです。

 そこで、日々何かを発見しようと意識しながら過ごすことで、今まで自分の業務には関係がないと思って目にも留まらなかったものに着目できたり、それが結果として、自分が関わる企業のビジネスを知ったり、企業に対して有益な情報を提供できたりすることにつながるわけです。

 具体的には、「あったこと」「感じたこと」「気づいたこと(発見したこと)」を毎日メールしてもらいます。

 例えば、以下のようなイメージです。

 福岡空港の全日空のVIP客専用窓口の列に並んでいたのに、すごく待たされた。見れば、一般客の列に並んでいる客が多くて、VIP客対応窓口を減らして、一般客対応にフル対応していた。おかげで、VIP客の列に並んだ人より後に一般客の列に並んだ人が、VIP客より早く手続を済ませるということが起こっていた。(ここまでが「あったこと」)

 一般客よりVIP客が待たされるなんて、なんのためにVIP会員というものを設定しているのかわからない。おかしな話だ。(ここまでが「感じたこと」)

 会社が決めたこと(今回のケースで言うと、「VIP会員の設定」)の本当の意味合い(今回のケースで言えば、「JALとお客さんを取り合いする中で、より全日空を利用されるお客様の満足度を高め、JALに浮気せず、常に全日空を利用してもらうこと」)を、お客様と実際に接する現場の社員が理解していないと、何の意味もない。規模が小さな会社であれば、現場の行っていることに会社としても目が行き届きやすいが、規模が大きくなればなるほど、そのような課題を抱えているものなのかもしれない。うちの顧問先企業も会社としては「CS向上」を掲げてはいるが、現場の顧客対応は問題ないのだろうか?(ここまでが「気づいたこと」)

 これは、企業のリーダークラスの方の視野を広げるためにやっていただくこともありますので、皆様の会社でも実行されることをオススメします。

 ポイントは、「毎日メールすること」です。「期限を決めて提出」というようにすると、日々業務に追われる中でどうしても毎日やらずに、期限前にまとめて思い出しながらやることになってしまいますので、その日気づいたことをその日処理するクセをつけさせるためにも、毎日実行させることがポイントとなります。(ちなみに、私がご支援している方は皆さん、毎日欠かさずメールを送ってくださいます。(長い方で、1,000日を越えています!)