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今3月期より有価証券報告書で「経営方針」を開示
(17/3/6)

 金融庁は2月14日、改正「企業内容等の開示に関する内閣府令」を公布した。

 これは、決算短信の記載内容とされている「経営方針」について、決算短信ではなく有価証券報告書において開示するように見直しを図るというもの。2016年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告で、決算短信・有価証券報告書の開示内容の整理・共通化・合理化に向けた提言がなされたことを受けての改正である(平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書及び同事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書から適用される)。

 「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の具体的記載内容としては、「目標の達成度合を測定する指標、算出方法、なぜその指標を利用するのかについての説明」などが考えられる(カッコ内はパブリックコメントに対する「金融庁の考え方」より。以下、同様)。金融庁では、「本改正は、経営計画等の具体的な目標数値の記載を義務付けるものではない」としつつも、「当該目標数値を任意で記載することは妨げられない」としており、「「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の欄の記載に当たっては、企業と投資者との「建設的な対話」に資するとの観点から、それぞれの企業の経営内容に即して企業が各自判断することが期待」されるとしている。

 パブリックコメントの結果、「複数の項目(経営方針・経営戦略等、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等、経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題等)の記載が求められているが、投資者が上場企業の経営方針をより適切に理解するために必要であれば、上場企業において適宜項目の統合等を行って差し支えないか」との質問が寄せられており、金融庁では「項目別に記載することは求めておりませんので、投資者の理解が容易になるようにするために一体的に記載することは問題ないと考えられます」と回答している。また、「経営方針・経営戦略」をすべて記載するとなるとボリュームが多くなる会社は、投資者の投資判断上重要な事項を抽出して開示することになる。

 なお、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の内容として、将来の目標(売上高や営業利益等の各段階利益)について具体的数値をもって記載を行った場合において、有価証券報告書の提出日後に将来の目標に重要な変更が生じたときや、実績と目標数値が大きくかい離したときは、仮に有価証券報告書の当該項目に「将来に関する事項が提出日現在において判断したものである旨」が記載されているケースにおいては、当該有価証券報告書について訂正報告書の提出は求められないとの理解で良いか」との質問に対し、金融庁は「仮に、有価証券報告書に合理的に算出した具体的な目標数値を記載した場合、有価証券報告書提出日現在においてその後の事情の変化が予測できていなかったのであれば、当該有価証券報告書の訂正報告書の提出は不要と考えられます。また、当該目標値についての有価証券報告書提出日現在における判断が合理的であれば、目標値と実績値がかい離したことのみをもって、金商法上の虚偽記載となることは考えにくいと認識しております」と回答している。

 今回の有報記載事項の改正に併せて、国内募集と並行して海外募集が行われる場合に、海外募集に係る臨時報告書に記載すべき情報が国内募集に係る有価証券届出書に全て記載されているときには、当該臨時報告書の提出を不要とする改正も行われている(公布・施行は2017年2月14日)。


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