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米国では税務報酬も桁違い
(16/05/17)

 日本公認会計士協会はこのほど、2016年版「上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書」を公表した。これは、日本公認会計士協会から委託を受けた監査人・監査報酬問題研究会が、2014年度(2014年4月期決算から2015年4月期決算)に係る日本の上場企業(調査対象企業3,559社)の監査報酬及び監査人の実態に関して実施した調査・分析結果を取りまとめたもの。

 これによると、3月決算企業の対売上高監査証明業務報酬比率(売上高を100%としたときの監査報酬の比率)は0.197%であり、監査報酬の平均金額は61百万円であることがわかった。市場別に分析してみると、新興市場の企業における監査報酬は平均で24百万円、非新興市場の企業における監査報酬は平均73百万円となっている。

 大手3監査法人(有限責任あずさ監査法人、新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ)とその他の監査事務所について監査報酬を比較してみると、大手監査法人の監査報酬が平均63百万円であるのに対し、その他の監査事務所の監査報酬は32百万円と、大手監査法人の監査報酬の半分に留まっている。大手3監査法人の方が相対的に高額の報酬で監査証明業務を担当している状況が分かる。

 一方、米国上場企業の2014年度の監査報酬は5,420社平均で2,292.53千ドル(100円換算で概ね229百万円)であることがわかった。日本企業の平均61百万円と比べると、米国企業では日本企業の実に3.7倍の監査報酬を支払っていることになる。2006年度の日米の監査報酬比は1:6.84であったことを考慮すると、監査報酬の格差は少しづつ縮まっていると言えよう。

 本調査では、米国上場企業の税務報酬も明らかになっている。これによると米国上場企業では平均405.16千ドルの税務報酬を支払っていることが分かった。中にはBlackstone Group L.P.やKKR & Co.L.Pのように税務報酬の方が監査報酬を上回っている米国上場企業もある。日本の上場企業の税務報酬の統計は出ていないものの、日本企業を大きく上回っているのは間違いない。

 監査報酬を多額に支払いつつそれ以上に税務対策に真剣に取り組み、投資家の期待に応えるという米国企業のスタンスが如実に現れる調査結果となっており、興味深い。



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