2015年6月1日に導入されたコーポレートガバナンス・コードの【原則4−14】では、上場会社が取締役・監査役に対してトレーニングの機会を提供することを求められている。 【原則4−14.取締役・監査役のトレーニング】 新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行うべきであり、取締役会は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべきである。 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第2回)で委員が提出した「取締役会の機能について」(エグゼクティブサーチやボードコンサルティングを手掛けるエゴンゼンダーが実施した企業統治実態調査2015に基づく資料)によると、「社外取締役へのトレーニングの提供(必要な知識の習得等)は行っていますか?」の問いに対して「十分工夫して行っている」と回答した上場企業は15%に過ぎず、「行っていない」が39.8%に上ることが分かった(対象:東証第1部上場企業。有効回答数314社)。 また、ガバナンスコードの原則4−3では、本則市場に上場している企業に取締役会の評価を実施することを求めている。 【原則4−3.取締役会の役割・責務(3)】 取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映すべきである。また、取締役会は、適時かつ正確な情報開示が行われるよう監督を行うとともに、内部統制やリスク管理体制を適切に整備すべきである。更に、取締役会は、経営陣・支配株主等の関連当事者と会社との間に生じ得る利益相反を適切に管理すべきである。 取締役会評価を実施している企業は、下記のように回答企業のうち2割程度に留まり、7割近くの企業が取締役会評価を実施していないこともわかった。
なお、上記の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第2回)資料の14ページには、取締役会評価報告書の例として、 ・グローバル戦略 ・顧客対応 ・ROEの改善 ・業績目標達成 ・明確な経営戦略 ・業務プロセスの改善 ・イノベーション ・企業カルチャー ・従業員のリテンション ・リスク管理強化 といった課題について、役員に対する「この課題は貴社にとってどの程度重要だと思いますか?」という問いと「この課題は貴社取締役会にてどの程度議論されていますか?」という問いへの回答結果の差(いわば理想と現実のギャップ)が大きい課題に改善方向を見出す取締役会の評価手法が示されており、参考にしたい。 |
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