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計算書類等の会計監査人受領日の特定が困難な理由
(15/10/22)

 会計監査人設置会社では、作成した計算書類や附属明細書(以下、計算書類等)を会計監査人に監査してもらい、監査報告書を入手する必要がある。監査に際しては、監査対象となる計算書類等を経理部等担当部署から会計監査人に渡すことになるが、その渡した日(会計監査人から見ると受領日)を特定するのは、実務上は意外と難しい。

 そもそも、なぜ計算書類等の会計監査人受領日を特定する必要があるのかどうかを確認しておこう。それは「会計監査人の計算書類等の受領日」が会計監査人の監査報告の内容の通知期限と連動するからだ。会計監査人が特定監査役及び特定取締役に対し会計監査報告の内容を通知する期限は、次の3つの日のうちいずれか遅い日とされている。

(1)計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日
(2)附属明細書を受領した日から1週間を経過した日
(3) 特定取締役、特定監査役及び会計監査人の間で合意により定めた日があるときは、その日

 すなわち、「会計監査人の計算書類等の受領日」が確定しない限り、会計監査報告の内容を通知する期限も確定しないことになる。

 この研究資料によると、公認会計士に対して行った「会計監査人が計算書類等を受領した日を確定することが困難なケースがあったか」といった質問に対し、「ほとんどない」と答えた公認会計士は約18%に過ぎず、約82%の公認会計士が「困難なケースがあった」と回答している。研究資料によると、計算書類等の受領日の確定が実務上困難となっている理由には、次のようなものが考えられるとしている。

決算早期化に対応するため、会計監査人としては計算書類等を形式的に完成しているとは言えないようなドラフト段階から入手・検討せざるを得ず、監査手続きの進行に伴い、会計監査人が当該ドラフトに対して修正を依頼するため、いつの時点が正式な正式な受領日なのかを特定できない。

企業によっては、代表取締役等から監査対象としての計算書類等の提供を正式に会計監査人が受けることが慣行となっていない。

 実際には会計監査報告の内容を通知する期限が特定できないことを理由に監査報告が行われないことは考えにくいが、会計処理の是非を巡って会社と会計監査人との間で深刻な意見の対立が生じたような場合には、会社側が希望する時期に監査報告が行われないリスクも高まる。経理担当者としては、無用のトラブルを防ぐためにも、計算書類等の提供日が明示された受領書を会計監査人から入手するよう努めるとともに、完成度の高い正式な決算書を早期に作成できる体制の構築に努めるべきと言えよう。



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