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PFI法の「公共施設等運営権」の会計処理を明確化へ
(15/09/16)

 財務会計基準機構(FASF)に設置されている基準諮問会議は、公共施設等運営権に係る会計上の取扱いについて、新規テーマとして検討すべきか企業会計基準委員会(ASBJ)の実務対応専門委員会に評価を依頼している。「公共施設等運営権」とは、平成23年のPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の改正により創設されたもの。利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定するというものである。空港や水道、道路などの分野での活用が見込まれており、民間事業者による安定的で自由度の高い運営を可能とすることにより利用者のニーズを反映した質の高いサービスが提供されることが期待されている。民間事業者の参入を促すためにも、会計上の取扱いを示す必要があるとされている。

 平成23年のPFI法改正により創設された公共施設等運営権とは、国や地方公共団体等の公共施設等の管理者が有する施設所有権のうち、当該公共施設等を運営して利用料金を収受する権利を民間事業者に設定するものである。

 空港や水道等の分野で取組みが進んでおり、先行する事業では、平成28年3月末に事業移管がなされ、運営権者による事業運営が開始される見込みとなっている。また、平成26年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014では、公共施設等運営権方式を活用したPFI事業については、2022年までの10年間で2〜3兆円としている目標を2016年度末までの集中強化期間に前倒すことや重点的な取組を設定した上、事業環境整備等の1つとして「公共施設等運営権方式を活用する場合の会計上の処理方法において、更新投資の償却や税金などの費用処理について実務的な観点から整理を行う。」旨が明記されていた。

 このため、内閣府では財務会計基準機構の基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)にPFI法に基づく公共施設等運営権制度の運営権者(民間事業者)における公共施設等運営権の会計処理を要望。これを受け、基準諮問会議は企業会計基準委員会の実務対応専門委員会に新規テーマとすべきか評価を依頼したものである。

 想定される論点としては、(1)公共施設等運営権の取得及び運営期間中の費用認識について(減損会計の適用可能性を含む)、(2)公共施設等運営権対価の算定、(3)プロフィットシェアリング条項等が付された場合の取扱い、(4)更新投資の取扱いが挙げられている。

 ただ、会計処理方法の概要に関しては、すでに内閣府に設置された「公共施設等運営権に係る会計処理方法に関するPT」が当時の想定されるスキームを前提とした研究報告(中間とりまとめ)を平成25年9月に公表しており、参考となる(なお、研究報告では、必要に応じて企業会計基準委員会に検討を要請することが考えられる旨が明記されている)。

 研究報告をみると、例えば、運営権については、運営権設定時に無形固定資産に計上し、運営事業の事業期間にわたって減価償却過程を経て費用認識するとしているほか、運営事業に付随して管理者等から売り払いを受ける施設や物品等の購入については、運営権対価とは区別し、別途、当該施設や物品等を有形固定資産等として計上することが考えられるとしている。

 上記(3)のプロフィットシェアリング条項とは、各事業年度の収益があらかじめ規定された基準を上回った場合に、その程度に応じて運営権者から管理者等に金銭を支払う仕組みのこと。研究報告では今後の検討課題とされているが、当該事業年度に帰属する収益等として認識するとの考え方が提案されている。また更新投資(維持管理)については、原状回復を目的とした更新(収益的支出)であれば費用処理、使用可能期間の延長・価値の向上を伴う更新(資本的支出)であれば運営権(無形固定資産)として資産計上し、運営事業の残存期間にわたって減価償却することが考えられるとしている。



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