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「コーポレート・ガバナンスの在り方」報告書が公表
(15/08/11)

 経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(座長:神田秀樹東京大学大学院法学政治学研究科教授)はこのほど、取締役会実務の具体例や会社役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント等をまとめた「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書を公表した。

 同研究会では中長期的な企業価値向上に向けたコーポレート・ガバナンスの実践を実現するための調査や議論を重ねており、その成果をまとめたのが、今回公表された報告書である。まず、「我が国企業のプラクティス集(別紙1)」では、各企業にヒアリングした結果が取締役会実務の項目別にまとめられている。企業名は匿名になっているが、公表資料からだけではうかがい知れない上場企業の取締役会実務の詳細や実態を垣間見ることができる。

 また、「会社役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント(別紙2)」では、争訟費用の前払規定などD&O保険の設計に関して留意すべき事項がまとめられている。ガバナンスコードの施行による投資家の権利意識の高まりに加え、多重代表訴訟を可能とする改正会社法が施行されたこともあり、株主代表訴訟や第三者訴訟は、今後増加する可能性がある。それに備えるための方策の一つとしてD&O保険を設計する際に、検討すべき課題の一覧として本別紙2を利用することが考えられる。

 さらに、「法的論点に関する解釈指針(別紙3)」では、取締役会実務に関する法的論点を解釈するための指針が示されている。例えば、社外取締役が業務執行をすると社外性が失われてしまうため、何をもって「業務を執行した」と言えるのか、現場では混乱も少なくない。そこで本解釈指針では、原則として「業務を執行した」にはあたらない行為として「任意に設置されたコンプライアンス委員会に出席し、自らの経験を基に役職員に対するレクチャーを行う等、社内におけるコンプライアンス向上の活動に関与すること」や「社外取締役が、その人脈を生かして、自らM&Aその他の商取引の相手方を発見し、紹介すること」など9つの例を紹介している。また、会社役員賠償責任保険(D&O保険)のうち、株主代表訴訟担保特約(代表訴訟に敗訴した場合における損害賠償金と争訟費用を担保する特約)部分の保険料について、現行実務では役員個人が経済的に負担しているところ、次の条件付きであれば会社が負担しても構わないとしている。

・取締役会が承認すること(利益相反のため)
以下のいずれかの方法により、社外取締役が監督(1)や監督(2)を行い、適法性や合理性を確保する。
  (1) 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意を得ること
  (2) 社外取締役全員の同意を得ること

 その他、「英米における取組の概要」では海外の会社の動向もまとめられており、ガバナンスコード対応の取締役会実務構築に資するものとなっている。



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