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モジュール型開示システムの実現可能性
(15/06/17)

 経済産業省が「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書の中で提案した「モジュール型開示システム」が話題を呼んでいる。

 「モジュール型開示システム」とは、金融商品取引法、会社法、上場規則に基づく制度開示や任意開示を企業が統合的に行うための方策を指している。まず、開示すべき情報の全体像(一体的・統合的な企業報告の全体)を認識した上で、そこから投資家にとって必要な情報の「モジュール(まとまった構成要素)」を切り出し、適切なタイミングで提供するという考え方である。

 モノづくりの現場では、製造コストの削減のために、部品や内蔵品をモジュール化し共通化する取り組みが一般的に行われている。モジュール化は、特に多品種の製造ラインで製造コストの削減に有効とされている。今回の報告書で提案されているのは、そのモジュール化の考え方を開示の現場にも持ち込もうというものだ。

 こういった発想が出てきた背景には、さまざまな法律、規則がそれぞれ独自に上場会社の開示内容を定めていることで、それぞれの開示内容に違いが生じてきており、その違いに対応するために多くの人的・時間的リソースを割かなければならないという現状があることが指摘できる。いわば上場会社の開示は多品種の製造ラインと同様の問題を抱えているというわけだ。

 開示項目のモジュール化に先立ち、項目ごとの開示内容の統一が不可避となるが、関係省庁等の調整には相当の時間がかかる。仮にモジュール化が実現するとしても、まだまだ先の話だ。それまでは、社内の開示プロセスを可視化して、可能な限り開示基礎データのモジュール化を図り、それを社内で共有することで対応するしかなさそうだ。



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