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該当がないことの適時開示の必要性
(15/04/17)

 東洋ゴムが国土交通大臣認定不適合の建築用免震積層ゴムを販売していた問題で、東洋ゴム以外の会社が同社の免震ゴムに関連した適時開示を行う事例が増えている(2015年3月26日現在30社を超える)。ほとんどは不動産保有を業務内容とするJ−REITであるが、中にはマンション販売業者も含まれている。

 大和ハウス・レジデンシャル投資法人のように「大臣認定の性能評価基準に適合していない免震材料が使用されていることが判明しましたので、お知らせします」といった開示もあるものの、ほとんどは「調査した結果、大臣認定不適合の免震材料が使用された物件がないことを確認しました」というもの。実はこの「該当なし」とは、取引所の適時開示の規則で求められている開示ではない。「投資家の不安を解消するために上場会社が独自に判断して開示する」というものにすぎない。そのため、「該当なし」の開示をしなくても適時開示規則に反することにはならない。もちろん自社の物件に不適合の免震ゴムが使用されたかどうかの調査は必要であるが、わざわざ「該当なし」の開示をするかどうかは別問題と言える。

 東日本大震災のときにも「被害状況は現在調査中です。調査の結果、当期業績への影響が見込まれる場合は速やかに開示します」といった自主的な開示が多くなされた。しかし、東日本大震災と免震ゴム不正とでは投資家の不安のレベルがあまりに異なる。開示する企業のほとんどがJ−REITであり、それ以外に広がらない理由は、そのあたりに理由があると言えよう。

 タイトルにわざわざ「(該当なし)」をつける開示例が散見されることも興味深い。「見出しをクリックして本文を見て初めて該当がないことがわかるよりはまし」という判断によるものと思われるが、そうであれば最初から開示しない方がましとの意見もある。その是非とはともかくとして、横並びが好きで、かつ、配慮も忘れない日本人の気質を垣間見ることができる開示例といえよう。



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