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日本でも導入!? 加速型自社株買いのネックは会計処理
(15/03/18)

 会計基準の設定主体である企業会計基準委員会が本格的に加速型自社株買い(ASR=Accelerated Share Repurchase)取引の会計処理の検討に動き出した。

 加速型自社株買いは日本ではまだ事例がないが、米国では企業の主要な自社株買いの手法の1つとなっている。加速型自社株買い取引によれば、投資銀行等を介してインサイダー取引に抵触することなく、株価の変動に合わせて自社株を裁量的に買うことができる。大量に買うことも可能でこの場合には株価上昇などにもつながりやすく株主にとってもメリットがあるものだ。

 では、なぜ日本では導入されていないのか。その大きな要因の1つは会計上の取扱いが不明確な点である。簡単にいえば、資本取引となるのか、損益取引となるのかが判然としないのだ。日本で加速型自社株買い取引が導入された場合、企業は自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)で自己株式を取得することになるが、当該株式は証券会社が市場から貸株として借り入れたものであり、証券会社との間で株価の推移に合わせて調整が行われることになる。その後、平均株価が上昇すれば株式で、逆に下落した場合には現金決済をすることになる。

 会計処理は、これらの取引を個別取引として認識するのか、あるいは一連の取引とみるかで大きく異なってくる。加速型自社株買い取引に対する日本企業の潜在ニーズは大きく、会計上の取扱いが決まれば一気に日本でも拡がる可能性がある。ただ、それには会計上、資本取引となることが明確化される必要がある。資本取引となれば、企業の新たな自社株買いの1つの手法として、企業にとっても導入を検討するに値するものになりそうだ。

 なお、企業会計基準委員会は、現在、より内容が分かるよう「加速型自社株買い取引」から「一括取得型による自社株式取得取引」に名称を変更した上で検討を行っている。



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