財務報告関連実務ニュース


確定版「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」が公表
(14/10/17)

 日本取引所自主規制法人はこのほど、「エクイティ・ファイナンスのプリンシプル」を公表した。これは、上場会社におけるエクイティ・ファイナンスの際に尊重されるべき原理・原則(プリンシプル)をまとめたもの。8月末から1か月のパブコメ期間を経て確定となった。

 パブコメ版と比べると、プリンシプル第2の「発行条件等は、ファイナンスに伴う株式の希薄化や流通市場に与える影響等について十分に配慮されたものであり、既存株主に対して合理的な説明が可能なものであること。」が、確定版では「ファイナンス手法、実施時期、発行条件等は、ファイナンスに伴う株式の希薄化や流通市場に与える影響等について十分に配慮されたものであり、既存株主に対して合理的な説明が可能なものであること。」と赤字部分が詳述されるといった変更が加えられているが、実質的な内容に変更はない。

 パブコメの結果、「本プリンシプルを上場会社の義務としてはどうか」といった意見が寄せられたものの、自主規制法人では「このプリンシプル・ベースの取組は、エクイティ・ファイナンスの実施にあたり尊重すべき重要な規範や行動原則を示すことで、上場会社や市場関係者に、各々の持ち場に即した規範意識が働き自主的かつ適切に行動されることを期待するものです。したがって、一律に義務付ける方法には馴染みにくいアプローチですが、この規範意識が広く共有されるようになれば、市場慣行として定着していくものと思われます」とコメントしている。

 また、「上場会社によるエクイティ・ファイナンスの実施については取引所の許可が必要とし、また、必要に応じて上場会社に対するヒアリングなどの調査が実施できるという制度にしてはどうか。」といった提案に対しては、「上場会社の機動的な資金調達の機会を奪う恐れがあるなどデメリットも大きいと考えられます。過剰な規制によって資本市場の活力を削いでしまうといった事態を避けつつ、実質において市場の公正性と透明性を向上させることが今回の取組の狙いです。なお、現在の実務運用においても、エクイティ・ファイナンスの実施にあたっては必ず取引所への事前相談を行っていただき、ヒアリングや関係資料の提出を求める等の対応をしております」と回答している。

 本プリンシプルは、それに違反したから上場廃止になるといった“ルール”という位置付けではない。ただ、上場会社、そして証券会社・弁護士・公認会計士・コンサルタント等の市場関係者、さらには株主・投資家の間において、本プリンシプルが広く共有され活用されることで、上場会社のエクイティ・ファイナンスの適正化を図るというものである。自主規制法人としては、「例えば、株主・投資者の皆様が本プリンシプルに掲げる四つの項目をチェックリストとしてお使いいただくなど、より合理的な投資判断を行う際にご活用して頂く」といった使い方も提案しており、上場会社としても意識せざるを得ない。まさに“プリンシプル”として機能することが期待されよう。



財務報告関連実務ニュース一覧へ