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厚生年金保険法改正で会計処理の明確化を求める声
(14/09/24)

 平成25年6月の厚生年金保険法の改正に伴い、「総合型厚生年金基金の特例解散における会計処理」及び「厚生年金基金の代行部分に関する前納の会計処理」に疑義が生じている。監査人は財務会計基準機構の基準諮問会議に会計処理の明確化を要望。現在、基準諮問会議の依頼を受けた企業会計基準委員会の実務対応専門委員会が調査を行っている。今後、会計処理の明確化が図られる可能性もありそうだ。

 具体的に見てみよう。まず「総合型厚生年金基金の特例解散における会計処理」だが、法改正により一定の総合型厚生年金基金に関する特例解散制度の見直しが行われたことに伴い、総合型厚生年金基金の「自主解散」の事例が出てきている。これらの基金に関しては、基本的に「代行割れ」の状態にあり、最低責任準備金に対する積立不足額を各事業主が負担することとなるが、事業主が複数事業主制度の例外処理(拠出時費用処理)を採用している場合、この負担部分に関する引当計上のタイミングが実務上の論点となる。実際には、基金(代議員会)における解散議決のタイミングか、あるいは解散議決の前のタイミングである基金(代議員会)における解散方針の議決の時点などで引当計上すべきか否かが問題となっている。

 また、「厚生年金基金の代行部分に関する前納の会計処理」の問題は、厚生年金保険法改正で厚生年金基金に関する制度の見直しが行われたことに伴い、平成26年4月から厚生年金基金が将来分返上認可を受けることにより、最低責任準備金の全部または一部を国に前納することが可能となったことに起因している。前納した場合には、前納額は原則として厚生年金基金に返還されないものの、一方で、前納額に係る前納日から解散日までの利息相当額の国への納付は不要になり、厚生年金基金には過去分返上認可までに利回りが達成できなかった場合のリスク(義務)がなくなるという経済的効果が生じることになる。この場合、退職給付会計基準において、どのように前納の経済的効果を会計処理に反映すべきかが不明確となっている。

 上記の会計処理については、適用指針や実務対応報告においても明確でないため、監査人サイドが財務会計基準機構の基準諮問会議に会計処理の明確化を求めたものである。これを受け、企業会計基準委員会の実務対応専門委員会では新しい会計テーマになり得るか調査を行っている段階。今後、会計処理の明確化が図られる可能性もありそうだ。



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