財務報告関連実務ニュース


特に周知性の高い上場企業、
資金調達に係る期間を短縮する案が公表
(14/07/17)

 金融庁はこのほど、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」等の改正案を公表した。これは、金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書の提言を踏まえての改正(関連ニュース「クラウドファンディング解禁等に向け報告書が正式公表」を参照)。金融庁では、7月30日までパブコメを求めている。

 改正案では、まず、現行法で禁止されている有価証券の募集・売出しに係る届出前勧誘(有価証券届出書を届け出る前に勧誘行為を行うこと)に該当しない行為が明確化されている。

 現行の「第三者割当を行う場合であって、割当予定先が限定され、当該割当予定先から当該第三者割当に係る有価証券が直ちに転売されるおそれが少ない場合(例えば、資本提携を行う場合、親会社が子会社株式を引き受ける場合等)に該当するときにおける、割当予定先を選定し、又は当該割当予定先の概況を把握することを目的とした届出前の割当予定先に対する調査、当該第三者割当の内容等に関する割当予定先との協議その他これに類する行為」に加えて、次のような行為が有価証券の取得勧誘又は売付け勧誘等には該当しない旨例示されている。

募集(第三者割当に係るものを除く)又は売出しを行おうとする有価証券に対する投資者の需要の見込みに関する調査であって、特定投資家(国、日本銀行及び適格機関投資家以外の特定投資家については、金融商品取引業者等が当該募集又は売出しを行おうとする顧客からの委託により又は自己のために当該調査を行う場合に限る)又は法第27条の23第4項に規定する株券等保有割合が5%以上である者を当該調査の対象者とし、かつ、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第15号に規定する措置又はこれに準ずる措置を講じて行われるもの

有価証券届出書の提出日の1月前の応当日以前において行われる当該有価証券届出書に係る有価証券の発行者に関する情報(当該発行者の発行する有価証券の募集又は売出しに係る情報を除く)の発信であって、他の者によって再び当該情報の発信が行われることが想定される場合にあっては、当該応当日から有価証券届出書の提出までの間に当該発信が行われることを防止するための合理的な措置を講じて行われるもの

発行者により通常の業務の過程において行われる定期的な企業情報の発信

発行者により通常の業務の過程において行われる新製品又は新サービスの発表

発行者に対する自発的な問合せに対して当該発行者により行われる、その製品・サービスその他の事業・財務の状況に関する回答

金融商品取引業者等により通常の業務の過程において行われる上場企業である発行者に係るアナリスト・レポートの配布又は公表

 これにより、一般的な情報発信やいわゆるプレヒアリングについては、届出前勧誘に該当しないことが明示されることになる。

 現行の金融商品取引法の下では、上場企業が有価証券を発行し投資者に取得させるには、有価証券届出書を提出した後7日間の待機期間を確保することが必要とされている。この点、今回の改正案には「特に周知性の高い企業」が行う有価証券の募集・売出しのうち、対象有価証券の取得・買付けの判断を比較的容易に行うことができるといえるような場合に限定して、待機期間を撤廃する案も盛り込まれている。

 具体的な要件は次の通り。

(1)有価証券届出書の届出者が次に掲げる全ての要件を満たすこと。

1) 当該有価証券届出書提出日前1年の応当日において有価証券報告書を提出している者であって、当該応当日以後当該有価証券届出書提出日までの間において適正に継続開示義務を履行しているものであること。

2) 上場株券又は店頭登録株券に該当する株券を発行していること。

3) 上場日等が当該有価証券届出書提出日の3年6月前の日以前の日であり、かつ、当該届出者の発行済株券について、算定基準日(同号イに規定する算定基準日をいう)以前3年間の売買金額(同号イに規定する売買金額をいう)の合計を3で除して得た額が1000億円以上であり、かつ、三年平均時価総額(同号イに規定する三年平均時価総額をいう)が1000億円以上であること。

(2)次のいずれかに係る届出であること。

1)上場株券又は店頭登録株券に該当する株券の募集又は売出し

2) 新株予約権無償割当てに係る新株予約権証券であって、上場株券又は店頭登録株券に該当する株券に係る株式を目的とする新株予約権を表示するものの募集

(3) 募集に係る届出にあっては、次の1)又は2)に掲げる有価証券の区分に応じ当該1)又は2)に掲げる割合が20%以下であること。

1) (2)1)に規定する株券
 当該届出に係る募集により発行し、又は移転する予定の株券の総数を、当該募集前の当該株券(発行者が所有するものを除く。)の総数で除して得た割合

2) (2)2)に規定する新株予約権証券
 当該届出に係る募集により発行し、又は移転する予定の新株予約権証券に係る新株予約権が全て行使された場合に当該行使により発行し、又は移転する予定の株券の総数を、当該募集前の当該株券(発行者が所有するものを除く。)の総数で除して得た割合

 こういった要件を満たす場合、資金調達に係る期間が短縮され、迅速なファイナンスが可能になることになる。改正後の規定は、8月下旬以降に公表する予定だ。



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