財務報告関連実務ニュース


金商法単体開示、産業界からは廃止を求める声
(14/06/16)

 平成26年3月末決算から有価証券報告書の単体財務諸表が簡素化され、多数の開示項目が削減されるとともに、残された開示項目の多くも会社法開示と同様の様式で可となり、企業の開示コストの負担が大幅に減少した。企業側からも、「抜本的な簡素化が実現した」との評価がもっぱらとなっている。

 金商法の単体開示の簡素化は産業界の長年の要望であり、今回これが実現した意義は大きいが、大幅な簡素化を受け企業側からは、「ここまで抜本的な簡素化ができるのであれば、もはや金商法の単体開示など要らないということではないか?」との声が上がっている。

 今回の財務諸表等規則(財規)の改正では、連結財務諸表で十分な開示が要求されている18の注記事項が削減され、また、会社法の計算規則と開示内容が大きく異ならない多くの開示項目(貸借対照表等の基本財務諸表を含む)を会社法の様式に統一する取扱いとなった。さらに、「開示のコストがベネフィットを大きく上回る」として企業からの批判の的となってきた「製造原価明細書」や「主な資産及び負債の内容」の開示も基本的に不要とされた。

  結果として、従来のままの開示が存置されたのは、
(1)「有価証券に関する注記」「税効果会計に関する注記」、
(2)「重要な後発事象の注記」「継続企業の前提に関する注記」等のみである。しかし、(1)は連結で十分な開示がなされているため、本来ならば削除の対象とされて然るべきであり、(2)は、単体開示を続けるとすれば不可避的な開示、裏を返せば、他の開示が全て不要とされれば自動的に削除される開示とも言える。

 それでも単体開示が廃止されない背景には、「どれだけ簡素化しても単体開示の廃止だけは避けたい」という金融庁の思惑がある。産業界は、今回の単体開示簡素化の意義の大きさは認めつつも、あくまで「金商法の単体開示の廃止」を求めていく姿勢を見せており、単体開示を巡る攻防は今後も続きそうだ。



財務報告関連実務ニュース一覧へ