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繰延資産、繰り延べしていなくとも会計方針に記載!?
(13/10/17)

 株式交付費(新株の発行又は自己株式の処分に係る費用)や社債発行費(社債発行のために直接支出した費用)を負担した期においては、支出時に全額を費用処理(営業外費用)する方法と、繰延資産に計上して分割して費用化(償却)する方法の両方が認められている。

 株式交付費を繰延資産に計上した場合、株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をすることになる。また、社債発行費を繰延資産に計上した場合、社債の償還までの期間にわたり利息法(継続適用を条件に定額法も可)により償却することになる。

 そして、単体財務諸表の(重要な会計方針)には繰延資産の処理方法を注記しなければならない(重要性の乏しいものを除く)。なお、連結財務諸表では(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)において繰延資産の処理方法の注記は不要とされている。

 ここで留意しなければいけないのが、株式交付費や社債発行費について支出時に全額を費用処理した場合でも、(重要な会計方針)において繰延資産の処理方法の注記をしなければならない(財規ガイドライン8の2−4)という点である。繰延資産に計上した場合だけ注記が必要になると誤解している方も多いので、注意したい。

 新株予約権の発行に係る費用についても、資金調達などの財務活動に係るものについては、社債発行費と同様に繰延資産として会計処理をすることができる(3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却)。ということは、重要性があれば支出時に全額を費用処理した場合でも繰延資産の処理方法に注記する必要が生じることになる。もちろん、「資金調達などの財務活動に係るものかどうか」(企業会計基準委員会実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」3(2))という要件も検討が必要となる。

 9月6日に金融庁が公表した「平成24年度有価証券報告書レビューの実施結果について」では、重要性が乏しいかどうかについて、

・質的重要性(当該事項の性質等)について全く考慮していない事例
金額的重要性について単一の指標のみ(例えば、総資産に対する一定比率のみ)を検討し、その他の指標について全く検討していない事例

 があったとして注意を呼びかけている(関連ニュース「平成24年度有価証券報告書レビューの実施結果が公表」)。重要性が乏しいことを理由として記載を省略する場合には、当該事項の重要性について、慎重かつ総合的に検討して、その判断経緯を文書化しておくべきといえよう。



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