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「繰延税金資産の回収可能性の判断」は
ASBJに移管も
(13/08/21)

 繰延税金資産の回収可能性の判断について、企業会計基準委員会が策定する可能性が出てきた。財務会計基準機構(FASF)に設置されている基準諮問会議はこのほど、日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」の見直しに関して、新規テーマとして検討すべきか否か企業会計基準委員会(ASBJ)へ調査を依頼することを決めた。監査委員会報告第66号は税制改正により、繰越欠損金の繰越期間が9年に延長されているが、これに対応した見直しは行われておらず、企業側から早期に見直すべきとの指摘がされていたものである。

 監査委員会報告第66号については、税制改正により、繰越欠損金の繰越期間が9年に延長されているが、これに対応した見直しはされていないのが現状だ。このため、日本公認会計士協会から企業会計基準委員会に移管し、最近の繰越期間を前提とした内容にすべきとの意見がある。ただ、繰延税金資産の回収可能性の判断に関しては、財務数値に重要な影響を与えるものであることから慎重な対応を行うこととされていたものだ。

 基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)では、企業会計基準委員会から新規テーマとする上での論点として、(1)企業会計基準委員会の会計基準、適用指針と会計士協会の監査に関する実務指針の役割分担、(2)現状の取扱いを変更した場合に生じる財務諸表作成実務や監査実務などに対する影響、(3)繰延税金資産の回収可能性に関するガイダンスのあり方(数値基準等)、(4)IFRSの任意適用との関係などを挙げ、その説明が行われている。

 この点、監査人からは現状の取扱いで特に問題はないとの意見がある一方、企業側からは優先度の高いテーマとして企業会計基準委員会に新規テーマとして検討を行うべきか否か調査を依頼すべきとの意見が相次いだ。すぐに同委員会での新規テーマとすることは難しいものの、今後、一定の調査・検討が行われることになる。

 そのほか、基準諮問会議が検討したテーマとして、「継続企業の前提が成立していない状況で適用する会計基準」の開発に関しては、現在、金融庁の企業会計審議会で特別目的の財務報告の監査について検討を行っているため、審議会の結論が出た段階で再度検討を行うこととされた。

 また、実務対応レベルでは、ポイント引当金は新規テーマとして企業会計基準委員会に提言しないこととした。これはIASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)による収益認識に関する会計基準の改正や運用状況を踏まえる必要があるためと説明している。一方、リストラ引当金の取扱いに関しては、包括的な検討は難しいと考えられるものの、企業会計基準委員会に調査・検討を依頼するとしている。



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