財務報告関連実務ニュース


ASBJが日本版IFRSを策定へ
(13/07/17)

 日本版IFRSが創設される運びとなった。企業会計審議会(会長:安藤英義専修大学教授)はこのほど、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を取りまとめた。当面の方針では、企業会計基準委員会(ASBJ)にエンドースメント手続を行った日本版IFRSの策定を求めている。これを受け、ASBJでは日本版IFRSの策定に着手する。策定までには少なくとも1年は要する見込みだ。そのほか、企業会計審議会ではIFRSの任意適用要件の緩和や単体開示の簡素化も決定している。

 企業会計審議会の当面の方針では、IFRSの適用の方法に関して、エンドースメント手続(自国基準へのIFRSの取込み手続)の導入、いわゆる日本版IFRSの創設を盛り込んだ。EUも含め、IFRSを適用している国のすべてがピュアIFRS(すべての国際会計基準を適用)を適用しているわけではないからだ(EUも金融商品会計基準を適用していない)。

 現在、日本では、金融庁長官がIFRSを指定国際会計基準と定めた上で、これを任意適用している状況だ。指定国際会計基準として定める際に、一部の基準を指定しないことは可能だが、IFRSの基準の中の一部分を修正する仕組みとはなっていない。日本の場合、開発費やのれんの非償却化など、受け入れ難い基準があるため、諸外国にならいエンドースメント手続を導入し、日本にとって適したIFRSを策定することとしたものだ。

 実際の日本版IFRSは、企業会計基準委員会(ASBJ)が策定することになる。まずは、エンドースメントする際の議論の進め方や判断基準などを検討していく方針。期間としては少なくとも1年程度は要する見込みだ。

 なお、日本版IFRSを策定すると、現行の日本基準、米国基準、ピュアIFRSと4つの基準が並列することになる。この点について批判はあるが、金融庁は、あくまでも単一で高品質な国際的な会計基準への収斂の流れの1つのステップと位置づけている。また、日本版IFRSが策定されたとしても適用はあくまでも任意となる。企業としては、適用できる会計基準の選択肢が1つ増えると考えておけばよいだろう。

 そのほか、企業会計審議会が取りまとめた当面の方針では、IFRSの任意適用企業数を増加するための対応として要件緩和が盛り込まれている。

 現在、IFRSを任意適用するには、(1)上場していること、(2)IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組・体制整備をしていること(例:財務会計基準機構に加入していることなど)、(3)国際的な財務活動又は事業活動を行っていることの3つの要件を満たす必要があるが、(1)及び(3)の要件を撤廃。上場準備企業でも任意適用を認める。これにより、株式公開の際に必要となる財務諸表をIFRSで作成することが可能になる。また、任意適用を行う上でネックとなっていた海外に資本金の額が20億円以上の連結子会社を保有しているという要件が撤廃されることにより、IFRSの任意適用に向けて準備している企業であればほとんどの企業で適用が可能になる。約4,000社が適用可能になる計算だ。

 実際の要件緩和については、今後、金融庁が内閣府令案を公表する予定。早ければ8月中にも要件緩和が実現する運びとなっている。

 単体開示の簡素化も実現する。任意適用も含め、IFRSを適用する上で問題となるのは開示の分量の多さだ。ただでさえ連結財務諸表の開示事項が多いなか、日本の場合は金融商品取引法に加え、会社法でも単体開示が求められている。

 このため、企業会計審議会の当面の方針では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書に関しては、会社法の計算書類と金融商品取引法の財務諸表との間で開示水準が大きく変わらないため、会社法の要求水準としている。つまり、貸借対照表などの本表については会社計算書類を流用することが可能になる。

 また、注記事項、附属明細表、主な資産及び負債の内容に関しては、(1)会社法と金商法とで開示水準が大きく変わらない場合は会社法の要求水準に統一、(2)会社法の計算書類で開示されなくても、金商法の連結財務諸表において連結ベースで情報が開示されている場合には、金商法の個別ベースの開示を免除することとしている。

 なお、単体開示のみの会社については、連結財務諸表の作成負担がなく、単体開示の簡素化に伴い代替する連結財務諸表の情報もないため、見直しは行われない。

 金融庁では今年の秋頃にも開示府令案を公表。年内にも確定し、平成26年3月決算から単体開示の簡素化を実施する方針だ。



財務報告関連実務ニュース一覧へ