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不正リスク対応基準は平成26年3月決算から適用へ
(13/01/17)

 企業会計審議会の監査部会(部会長:脇田良一名古屋経済大学大学院教授)はこのほど、「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を取りまとめ、了承した。1か月程度意見募集した後、平成26年3月決算の監査から適用する方針だ。

 なお、10月18日開催の監査部会で提案されていた不明瞭な取引解明のため、当該被監査会社の取引先の監査人に取引先の調査を依頼するなどのスキームについては、解決すべき論点があることから、今回の公開草案には盛り込まず、継続して検討することとされている。

 今回の不正リスク対応基準は、オリンパスなどの最近の粉飾決算事件を踏まえた見直し。不正による重要な虚偽表示のリスクに対応する監査手続等を規定するもので、(1)職業的懐疑心の強調、(2)不正リスクに対応した監査の実施、(3)不正リスクに対応した監査事務所の品質管理の3つから構成される。

 (2)の不正リスクに対応した監査の実施では、監査人は不正リスクに応じた監査計画を策定することが求められる。また、財務諸表全体に関連する不正リスクが識別された場合には、抜き打ち監査手続の実施、往査先や監査実施時期の変更など、企業が想定しない要素を監査計画に組み込むことが必要とした。

 監査実施の過程では、「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」を識別した場合には、「不正による重要な虚偽の表示の疑義」が存在していないかどうかを判断するため、経営者に質問し説明を求めるとともに、追加的な監査手続を実施しなければならないとしている。「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」とは、「企業の通常の取引過程から外れた重要な取引」や「偽造されたおそれのある文書が存在する」などが例示として挙げられている。

 不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況について、経営者の説明に合理性がない場合や十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義と扱うことになり、想定される不正の態様等に直接対応した監査手続を立案し監査計画を修正するとともに、修正した監査契約にしたがって監査手続を実施することになる。



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