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企業が混乱した退職給付会計の税効果の取扱いが明らかに
(13/01/17)

 日本公認会計士協会はこのほど、「税効果会計に関するQ&A」の改正案を公表した。新たな退職給付会計が適用されることに伴い、繰延税金資産の回収可能性における会社分類で連結財務諸表と個別財務諸表が異なるのではないかとの疑義が生じていたが、これまで通り会社分類は異なることはないとの見解を示している。

 新しい退職給付会計基準が平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用される。退職給付会計基準では、連結財務諸表上、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を負債又は資産として計上することになる。一方、個別財務諸表についてはこれまでの取扱いと変更はない。つまり、連単分離ということになる。

 ここで問題となっていたのは、退職給付会計基準適用に伴う個別財務諸表上の退職給付引当金と連結財務諸表上の退職給付に係る負債についての税効果会計の取扱いである。具体的には、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」における会社分類(例示区分)が連結と個別財務諸表で異なるかどうかという点である。一部専門誌において大手監査法人の公認会計士が「会社分類が異なる可能性がある」との見解を示したことにより、産業界などで混乱が生じていたものだ。

 Q&Aの改正案では、連結財務諸表上の「退職給付に係る負債(又は資産)」に係る税効果については、まず、個別財務諸表における退職給付引当金にかかる一時差異に対する繰延税金資産の額を計上し、これに連結修正項目についての税効果額を合算し、この合算額についての回収可能性を判断することになるとしている。

 そのうえで、個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断と、この個別財務諸表における繰延税金資産に連結修正項目に係る繰延税金資産を合算した連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断は、未認識の負債(または資産)の連結貸借対照表への即時認識を行うか否かにより将来年度の課税所得の見積りが変わるものではないと指摘。このため、連結財務諸表における会社分類は、個別財務諸表における会社分類と変わらないことを明確化している。

 たとえば、監査委員会報告第66号の会社分類が(1)(期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等)である場合、連結修正において生じる将来減算一時差異を考慮すると、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上していないことになる場合も考えられるが、この場合も連結財務諸表における会社分類は個別財務諸表と同じ(1)ということになる。



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