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親会社による子会社の監督義務は見送りも
(12/12/17)

 法制審議会が9月7日に取りまとめた「会社法制の見直しに関する要綱」には盛り込まれなかったが、会社法制部会で大きな議論の1つとなったのが親会社による子会社の業務の監督を職務とする旨の規定を置くかどうかという論点だ。

 この点、企業の反対意見を受け監督義務は明記されなかったが、株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の内容に、「企業集団における業務の適正を確保するための体制」が含まれる旨が会社法本体に定められることで一応の決着が図られている。

 東京地裁の平成13年1月25日判決(平成9年(ワ)9480号)によると、野村證券の株主である原告らが同社の米国における100%孫会社が米国証券取引委員会規則違反を理由に課徴金を納付したことに対して、同社の取締役らに責任があるとした株主代表訴訟では、裁判所が「親会社の取締役は、特段の事情がない限り、子会社の取締役の業務執行の結果、子会社に損害が生じ、さらに親会社に損害が生じた場合でも直ちに任務懈怠の責任を負うわけではない」などと判断。親会社取締役の子会社を監督する責任は原則として存在しないと判示している。

 これに対して、法制審議会会社法制部会の検討段階では、この判決を否定すべきではないかとして、子会社業務の監督をすることを職務とする等の規定を置くかどうか議論が行われた。

 しかし、企業側からは子会社経営の裁量権を奪いかねないとの懸念や現行法上の親会社取締役の義務を拡大するといった反対意見が出され、合意には至らなかった。

 最終的には、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)について、株式会社の業務の適正を確保するための必要なものとして会社法本体に定めることで決着がつくことになった(会社法制の見直しに関する要綱第二部第一1の(1の後注))。



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