財務報告関連実務ニュース


最高裁が濫用的な会社分割にメス
(12/11/15)

 債務超過となっている会社が新設分割を行うことにより、一部の優良資産や事業等を承継させた後、分割会社を清算するという再建手法が採られることが見受けられるが、中には濫用的な会社分割であるとして訴訟に至っているケースも多い。こうした中で最高裁はこのほど、濫用的な会社分割に初めてメスを入れる判断を下した。

 原審の大阪高等裁判所では、新設分割は財産権を目的とする法律行為であり、会社法810条の定める債権者保護手続の対象とされていない債権者については詐害行為取消権の行使が否定されるべき理由はなく、新設分割は詐害行為取消権行使の対象になり得ると判断。被上告人(債権者)の請求を認めていた。

 今回の最高裁も、「会社法その他の法令において、新設分割が詐害行為取消権行使の対象となることを否定する明文の規定は存しない」、「新設分割により新たに設立される株式会社に債権に係る債務が承継されずに保護されない債権者については、詐害行為取消権によってその保護を図る必要性がある」と指摘している。

 9月7日に法制審議会が取りまとめた「会社法制の見直しに関する要綱」には、民法上の詐害行為取消権に加えて、会社法において、残存債権者が詐害的な会社分割に係る行為を取り消すことなく、新設会社等(承継会社)に対しても、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる旨が盛り込まれた。会社法改正が行われた場合には、会社法でも濫用的な会社分割は認められなくなる。



財務報告関連実務ニュース一覧へ